NPO法人3keys
2017年FITチャリティ・ラン支援先団体である「認定NPO法人3keys(スリーキーズ)」は、新宿区矢来町を拠点とし、貧困や虐待など親や家庭の状況によらず、全ての子どもたちが社会から孤立することなく安心・安全に暮らしていけることを理念に活動をしています。
今回は代表理事の森山誉恵さん、広報担当の鈴木達也さんにお話を伺いました。
左から、今回インタビューを担当した嶋倫子(FIT広報チーム)、3keys代表理事の森山誉恵さん、広報担当の鈴木達也さん、および松本陽香(FIT実行委員長)
FIT:3keysのご活動を始められたきっかけを教えてください
森山:大学生の時にボランティアとして児童養護施設で勉強を教えていたことがきっかけでした。家庭環境により学習の遅れや学校生活に影響があり、その後の進路や就労に困難が生じる子や、貧困から抜け出せないという子がいる現実を目の当たりにして衝撃を受けました。また、どの施設も恒常的にボランティアの人手不足という問題を抱えていました。社会学に興味を抱いて政治学科に進学したものの、そうした真の社会問題を学ぶ機会もなかったこともあり、この現実をもっと周りにも伝えたい、少しでも私自身の時間を使って社会の助けになりたいという思いから在学中に活動を始めました。
FIT:当初はどんな活動をされていたのですか
森山:6名の学生メンバーが集まり運営しました。大学生や社会人30名ほどの教師を募り、各施設につなげる役割を担うことで、施設の人手不足を解消しようと思ったのです。各施設にどんな方が必要かをヒアリングし、個別のニーズにマッチした学生を紹介していきました。説明会を実施したり新聞記事などで私たちの活動が社会に伝わると、社会人の方でも教育福祉の分野に興味がありながらもこれまで携わる機会がなかった方などが積極的に協力してくださりました。
FIT:鈴木さんは社会人として、学生が運営する3keysを応援したいとかいう思いからご一緒されたのですね
鈴木:はい、森山さんの純粋な志に大変共感し、応援したいと思い参画を決めました。私はそれまでか普通の社会人として働いていたのですが、一線から退こうと検討していたタイミングで3keysの存在を知ったことがきっかけでした。社会人としての自身の経験を生かすことで、なにか力になれるのでは、と思いました。
森山:ボランティアや学生だけの運営ですと、平日の昼間の活動や就活などの期間の運営に制限が生じてしまいます。子どもたちが助けを求めてくる時間帯や、企業からの問い合わせに対応できる時間帯での活動を考えると、社会人と学生の両方の力が必要だったのでとても助かりました。
FIT:現在3keysではどういった活動をされているのですか
森山:おもに3つの柱で活動しています。
1つ目は子どもにむけた学習支援です。十分な学習ができる環境にない子どもたちに学習機会を提供しています。
2つ目は子どもたちの声を受け止める活動です。これを円滑に行うため1年ほどの準備期間を経て、2016年4月に「Mex(ミークス)」という支援サービスの検索・相談ができるサイトを立ち上げました。保護されるべきなのに見逃されている子や、施設から自宅に戻されてしまった子などからの助けの声を受け止めることができるように、声を上げることができる窓口やサービスを検索できるサービスです。掲載している団体は調査をしっかり実施して登録しています。サービス数は160ほどあります。アクセス数は2017年度で14万人程となり、このサイトを通じて約4,000名に支援を届けることができました。広告バナーの仕組みなどのシステムを駆使することで、子どもたちが困ったときに簡単にたどり着けるサイトを目指しています。
3つ目は講演会やセミナーを通じた啓蒙活動です。これまでマイクロソフト社や
ツイッター社にもご協力いただき、子どもたちはどういう悩みを抱えているのか、私たち大人にできることは何か、など子どもを取り巻く問題について考えるきっかけを提供してきました。こうした機会は今後も増やしていきたいです。
FIT:現在の活動の背景に、森山さんご自身のどのような思いがあるのでしょうか
森山:子どもに寄り添った活動を通じて、子ども自身の権利を一番にとらえ、しっかりと守る存在でありたいと思っています。子どもと親はセットで支援を受けるということが通常であり、子ども自身の権利が見過ごされがちです。残念なことに、支援された子どもたちはサポートの手薄さや行政の基盤が整っていないことと相まって、「支援」に対して好印象を抱いていないのも事実です。子どもたち自身が助けを求めることができる環境を整えていきたいという思いが形になったのが、まさに「Mex(ミークス)」でもあります。「支援」に対する印象や使いづらさ等を覆すべく、子どもを第一に考え、支えていくというスタンスをこれからも持ち続けたいです。
FIT:今後3keysの活動はどのような方向を目指されますか
森山:ある一定の見えるかたちで成果をつくることで、行政に訴えかけ、社会全体を変えていく活動につなげていきたいです。私たちの活動がきちんとしたかたちで認識されることで、社会問題としてより深刻に受け止めてもらえるようになると信じています。社会的にゴールとみなされていることは必ずしも子どもの幸せにつながらないこともあります。貧困や虐待から生じる問題を抱える子どもたちが「与えられるべきもの」をきちんと手にすることができる環境を整えていきたいです。
FIT:日々、どのようなモチベーションに突き動かされているのでしょうか
森山:子どもの権利という当たり前すぎることが整っていないことに対しての問題意識・権利意識が根幹にあります。「あったらいいな」と考えたものをかたちにできたときや、問題が解決できたと実感したときには、達成感を感じます。私自身が「大人の一人」としてやるべきことをしていくことが大切だなと思います。子どもたちの抱える問題はひとつ解決したとしても、また次の問題が見えてきます。子どもたちと向き合っていると、人としての心の通った支援をしたくなり、「親心」のようなものが芽生えます。それが活動の原動力でもあります。私自身が子どもと向き合い、サポートしていく中で、彼女や彼らの成長した姿を垣間見た瞬間の感動はひとしおです。
鈴木:社会問題と社会人の日常の間にある溝を狭くしていくことがモチベーションのひとつと言えます。社会人として「お金を稼ぐ」ことを根幹としていたころと比べると、3keysの活動はずいぶんと離れた世界だと実感しています。だからこそ、社会人の日常に入り込むきっかけを作っていきたいです。そのためには困難は多いと感じていますが、やる気が沸いてきます。
FIT:FITからのご支援はどのようなことにお役立ていただけますか
森山:主に2つです。
1つはMexに掲載するサービス・団体を広げていくことです。関東近辺に限らず、地方にある良いサービス・支援に手広くリーチして、サービスを拡充していきたいです。
2つ目はセミナーや講演の実施です。今後もセミナーや講演の機会を設け、企業様との連携を強めていくことで、より子どもの貧困、虐待など親との間に生じる問題の深刻さを社会に正しく伝え、行政へアピールしていきたいです。
FIT:最後に一言どうぞ!
森山・鈴木:ありがとうございました。これからもコラボレーションの機会を引き続きもてたら嬉しいです。