特定NPO法人 樹木・環境ネットワーク協会
特定NPO法人 樹木・環境ネットワーク協会は、森を守り、人に自然の大切さを伝える人材を育成しています。今回は事務局長である後藤さんにお話を伺いました。
活動の様子
後藤さんの経歴と活動を始めようと思われたきっかけを教えてください。
創設メンバーの一人である山本(樹木の治療を行う樹医)は、「一つの木を治療するだけでは守れない。木をとりまく環境全体を良くしなければならない。」という想いから、環境保全の必要性を感じていました。団体が設立されたのは約30年前、社会的に環境問題への関心が高まる中、さまざまな取り組みが盛んになり、市民活動も増えていました。ところが、誤った取り組みも多く見られていました。そこで環境に取り組むためには正しい知識をもった人材が必要だと考え、人材の育成を目的に団体を設立するに至りました。その後、町田市と八ヶ岳において保全活動を開始しています。
私は、大学では生態学を専攻し、クラブ活動ではホタルを育てる活動を行っていました。卒業後、企業に就職しましたが、休日を使い環境教育のボランティア活動を行っていました。大学時代の、ホタルの飼育や鑑賞会の経験から、里山を守ることと子どもたちが自然に触れることの大切さを感じ、それを自分の仕事にできないかと考えていたところ、当団体の採用情報を見つけ、転職したのが団体の活動に携わるようになったきっかけでした。今でもその考えは変わらず、自然を守りながら、その自然に子どもたちが触れて、体験できる機会をどんどんつくっていきたいという想いでいます。
これまでNPOの活動を続けてきて最も困難だったことは?
NPOは非営利活動故に運営に必要な収入源の確保が難しい側面があります。特に社会情勢で大きく左右されることもしばしばありました。特に営利を目的としない活動を主としているため、運営で必要なコストは大きくなります。さらに、事務局を担う人手不足は常に慢性的になりがちで、安定した運営体制の維持は難しいといえます。
また、活動を支えるボランティアメンバーは、長年活動を続けてくださっているものの、高齢化が顕著になってきており、世代交代の難しさも痛感している状況です。
団体を立ち上げて良かったことは?
設立当初より「持続可能な社会を目指して」を掲げて活動を進めてきました。今では普通に耳にする言葉となりましたが、団体の理念と同じくすることが、社会的に認知を広めてきたことは、とても喜びを感じています。また、活動の中で、環境教育を受けた学生が、林業・森の業界を志したことを知ったことも、長年活動を続けてきた成果として良かったと感じました。
1995年の設立以降、環境に対する社会の意識はどのように変わったと思われますか?
社会全体で環境への関心は高まっていると感じています。しかし、その背景には、気候変動等による影響が社会にも出始めていることで、危機意識が環境へ向いているためであり、原因を考えると決してうれしいことではありません。
一方で、関心の高い人が集まり行動に移していく人も増えています。特に若い人が活動に参加してくださる機会も多くなり、高齢化が課題と感じている昨今ではとても勇気づけられる動きです。また、これまでの成果を求める活動とは異なり、参加する方が楽しみややりがいを求めている様子も見られ、活動の在り方にも変化が訪れているのを感じています。
活動の様子
FITからの寄付金はどのように使用されていますか?
今年度より新規事業がスタートしています。都内の森づくりに、100人の子どもたちが携わり、森の自然調査や観察、子どもたちの自然体験、自然学習の場を創出するプロジェクトを実施しています。FITからの寄付金はこのプロジェクトの運営に活用させていただいています。子どもたちは、毎月森を訪れ、季節の変化やそこで見られる生きものを探して記録する役割を担い、将来はレンジャー活動も実践する予定です。
また、全国で行っている森づくりフィールドでは、近隣の保育園の子どもたちも裸足で遊べるほど安心して利用できる森になってきています。このように、子どもたちが自然の中で安心して活動ができる場の整備活動にも活用させていただいています。
今後はどのような活動の広がりを考えていますか?
一つは、現在進めているプロジェクトに関わっている子どもたちが、より主体的になれる場をつくっていくことです。そのためのエリア設定や活動の場づくりを、現在自治体の方とも協議を進めています。
また、森づくりでは「里山」をモデルに活動していることもあり、いかに社会として森を利用し、森が人に利用されたことでより豊かになっていくかの好循環を作り出したいと考えています。そのための活動として、伐木の木を使った薪で焼くピザ体験や森を豊かにするための養蜂活動を昨年スタートさせました。
子どもたちの活動や里山づくりによる豊かな森づくり、そしてそこで形成されるコミュニティを通じて、持続可能な社会に向けた活動を目指したいと考えています。
私たちからはどのような支援ができるでしょうか?
コロナ禍もあって財源が落ち込んでいた中、FITからご寄付をいただいたことで、活動の運営面や新規事業のスタートアップ面でも非常に助けられました。非営利活動としては、このようなご支援は非常に助かっております。
また、ともに支援を受けた他団体の中には、普段はなかなか接することのない分野の団体もあり、当団体としても非常に刺激的でした。他団体との交流や情報交換の場があってもいいかもしれません。
当会としては、各保全フィールドやイベント等、活動に参加していただける機会も提供できますので、ぜひ実際の活動を見ていただく機会があると良いかもしれません。
最後にこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
自然環境を守るには、人が手を入れないほうが良いという認識や、木の伐採を自然破壊とする風潮はいまだに拭えません。しかし、自然は人が手を入れ、木を伐り、利用することで、より豊かなものになっていくという側面があります。それが「里山」です。これからの社会では、私たちが豊かに、また持続的に生活をしていくために、生物多様性はなんとしても守らなければならないものです。その最適解が「里山」にあると信じています。少しでも興味をもっていただけたなら、まずは森や自然の中へ足を運んでみていただけたらと思います。
活動の様子
特定NPO法人 樹木・環境ネットワーク協会
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