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認定特定非営利活動法人エッジ

認定非営利活動法人エッジは、ディスレクシア(読み書き困難)の「正しい認識の普及」と「支援」を行っています。今回は「エッジ」の代表理事である藤堂さんからお話を伺いました。

インドスタディツアー“Asia Pacific Dyslexia Festival & Symposium 2016”アジアの代表者

認定非営利活動法人エッジを始めたきっかけを教えてください。

エッジを作ったきっかけは15歳で英国に留学をした長男が現地でディスレクシアと診断され、その時に息子から頼まれたからです。「自分はこのお母さんがいて、英国に行きたいと言った時に送り出せる環境があり、英国ですぐに診断され、自分のことがわかり、すぐに支援を受け、将来に向かって進む道が見えてきた。思い返せば日本の学校で僕よりも大変な思いをしている子たちがいた。僕は大丈夫だから、ママは何か日本の状況を変えることをして」

長男の思いを形にして、200110月にNPO法人を立ち上げ、2017914日にその公益性が認められ認定NPO法人になりました。今年で活動を始めて22年目になります。

非営利活動法人の発足以来、最も困難だったこと、また良かったことは何でしたか?

発足当初はディスレクシアの子どもを持つお母さんたちが理事になり、同じような環境にある家族のネットワークとしての活動が中心でした。その後、私はディスレクシアに関する社会課題の解決に向け活動のスケールの拡大を求め、その方向性の違いから、NPO法人を一緒に運営してくれるメンバーを再編することになりました。身を切られるような経験でしたが、活動内容は大きく発展し、発達障害に関わる他の団体と連携をしたり、文科省への働きかけや政策・施策への提案をしたり多様な活動が行えるようになりました。

行政機関への働きかけを通して、発達障害者支援法、障害者差別解消法、教科書バリアフリー法、読書バリアフリー法などの法律の立法に携わりました。ディスレクシアは目に見えない困難です。困難の背景、支援、ディスレクシアならではの能力など、より深く知ってもらう活動を促進していく上で、基盤の一歩を踏み出すことができました。

FITからの資金はどのように使用されていますか?
エッジは、ディスレクシアのすべての人が活き活きと暮らせる社会を目指し、アセスメントの普及を重視しています。知的に問題はなく、視覚・聴覚の器官の異常がないものの読み書きに困難を持つ症状がある場合をディスレクシアと称し、欧米の調査によると人口の10%はディスレクシアではないかと考えられます。しかし日本では、例えば日本の大学入学共通テストでの受験配慮申請状況を見ても、ほんの僅かしかみられないのが現状です。日本の大学入試の共通テストでは医療的診断を必須としているのですが、欧米では教育的診断やアセスメントによって配慮を受けられるのが大きな違いです。その背景として、日本ではディスレクシアのアセスメント自体がまだ普及していないことが挙げられます。英国では学校のクラス担任であれば、誰でもアセスメントができるような環境です。アセスメントの機会を増やすため、まずはE-ラーニングでアセッサー(=アセスメントを実施する人)を増やす取り組みを今年中に展開します。アセスメントは、子どもが自分を知る、保護者がディスレクシアを理解し指導方法に気づく、その子の人生を幸せにするよう考えていく上で非常に重要です。どのような面でどの程度の困難があるのかアセスメントを通してみつけていくことで、学習方法や学校での支援、合理的な配慮を計画していくことができます。

エッジではこれまで500件程の個別アセスメントを実施してきましたが、集団アセスメントの必要性も感じています。早期のうちに児童生徒の読み書きの困難さをみつけられるからです。自治体や教育委員会、学校といった単位で行います。今年は港区、呉市および星槎中学校と小田原市で実施を予定しています。

作文ワークショップの様子

今後はどのような活動の広がりを考えていますか?今後の展望をお聞かせください。

ディスレクシアの子どもたちの居場所をオンラインで作るいわゆる「メタバース」を広げたいと考えています。こども家庭庁の委託事業として現在進行中のプロジェクトでは、メタバースで「エンパワメントセンター」を提供します。10月にプレオープン、12月にオープンの予定です。誰でも参加できる広場のようなメタバースで、ロールモデルから学べたり、必要な場合にアセスメントを行ったり、仲間と一緒に協力し合ったり、発信や作品の展示、ビデオの閲覧などが可能な空間です。また「発信したい」という思いを実現させるため、8月には作品コンペをして入選作品の展示を行います。お互いにすぐに相談でき、ホッとできる空間にしたいと思っています。

キャンプ集合写真メタバース・ワークショップの様子、出来上がったバーチャルな居場所空間(右上)


シンガポールには、全国16か所にディスレクシアのラーニングセンターが実在しています。日本では発達支援センターは設置されているものの、ディスレクシアへの対応はほとんどなされておらず、エンパワメント強化や交流の場の形成が望まれています。国連で108日にディスレクシア宣言を採択する動きがあることから近年始まった動きですが、10月はディスレクシアの啓発月間です。エッジでは、20231078日に港区で開催されるみなと区民まつりでブース展示を行う予定です。その1年後には2週間程度のモデルルームの開設、その翌年には、常設のセンターを設立する構想があります。そして各地に広げていきたいです。

私たちからはどのような支援ができるでしょうか?最後にこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

まず、ディスレクシアについて知っていただくのが一番大切です。発達障害の自閉症スペクトラム障害やADHD(注意欠如・多動性障害)は、およそ13歳のうちに診断されると言われています。一方、学習障害(LD)であるディスレクシアは、通常、就学以前にはわかりません。保護者も、ディスレクシアの子どもが勉強を怠けているわけではなく、どのように指導していけば良いのか、子どもの人生を幸せにするよう理解を深めるまで時間がかかることがあります。ディスレクシアの人たちが自分に合った方法や環境で本来持っている能力を発揮できるよう、メッセージを広げていくお手伝いをしていただければ幸いです。これからもディスレクシアについて理解し、支援し、エバンジェリストになってくれる人たちを増やしていきたいと思います。

代表の中島さん(中央)とFIT2022実行委員の高橋(左)建築ワークショップの様子

認定非営利活動法人エッジ
https://www.npo-edge.jp/

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