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つくろい東京ファンド

2017年支援先団体として選ばれたつくろい東京ファンドは「市民の力でセーフティネットのほころびを修繕しよう」を合言葉に東京都内で生活困窮者に対し、住まい、仕事、居場所等を提供の他、子供食堂なども手がけている団体です。

代表理事の稲葉剛さんとカフェ潮の路、潮の路珈琲コーディネーターの小林美穂子さんに話を伺いました。


左から、今回インタビューを担当した松本陽香(FIT実行委員長)、カフェ潮の路珈琲コーディネーターの小林美穂子さん、代表理事の稲葉剛さん、および嶋倫子(FIT広報チーム)


FIT: つくろい東京ファンドを立ち上げたきっかけを教えてください。
稲葉:私自身が大学院生の時、ボランティアとしてホームレスの方々の支援を始めたのがきっかけです。1990年代はバブル崩壊の影響もあり、路上生活者が急激に増えはじめました。この頃の私のような支援者は「ホームレス支援第一世代」と呼ばれています。2003年には路上生活者の人数がピークを迎え、全国で25,000人いたと言われています。現在は6,000人と、都内でもピーク時の1/4になったようです。なかなか路上から抜け出せない人は、実は精神疾患、知的障害等を患っている方が多いということもわかってきました。障害のある方々や路上生活者は生活保護申請をすることにより、各区役所にある福祉課が紹介する施設に入ることができます。しかし、提供される住居施設はほとんどが相部屋で、多い時は20名ほどが一部屋ということもあります。そのような住環境では、障害を理由にいじめにあったり、集団生活に馴染めず結局また路上に戻ってしまう人も少なくありません。そうした問題を解決したいと考えていたタイミングで、たまたま沼袋の空いている7部屋を紹介してくださった方がいたため、クラウドファンディングを活用して生活に必要なものを備えた個室シェルターを設立しました。これを機に2014年「つくろいハウス」を開設しました。

FIT: 小林さんがここカフェ潮の路のコーディネーターとなったきっかけは何でしょうか。
小林:上海に住んでいた2008年の暮れに「派遣村」のニュースを見たことがきっかけでした。それまで日本には貧困という概念は無縁であり、アフリカやカンボジアなどの途上国の話だと思っていたので、大変印象に残る映像でした。それから後、日本で道を歩く度に、これまで気にならなかった路上生活者の姿が目に飛び込んでくることに気づきました。帰国後は、特定非営利活動法人ビッグイシュー基金にインターンとして参画し、貧困を支援する他の団体などでも活動しつつ生活保護の事などを勉強していきました。

FIT: つくろい東京ファンドではどのような活動をされているのですか。
稲葉:路上生活者への「すまい」「仕事」「居場所」の提供を根幹に活動しています。
1つ目の「すまい」についてですが、設立当初は中野区を中心としていましたが、今は新宿区、豊島区、墨田区に22部屋の個室シェルターを路上生活者に向けて提供しています。
「つくろいハウス」という名で始まった私たちの提供する「すまい」はメディアにも取り上げられることで話題となり、現在深刻化している空き家問題とも相まって、家主の方々から自分の空いてる部屋を是非使って欲しいと提案をいただく機会も増えました。
また、月に2回ほど都内の公園を中心に夜回りし、路上生活者の方々と話をしています。そこで出会った方々の中から、路上生活を抜け出して個室シェルター入居を希望されるというケースもあります。

結果、2017年は40-50人の路上生活者が一時的にこの個室シェルターを活用し、その後自分自身で生活をするまでに至っています。

2つ目の「仕事」と「居場所」の提供は、2017年4月にはじめた「カフェ潮の路」が拠点です。自立を始めた路上生活者のために、彼らが集まり、働ける場所を提供したいという思いから、このカフェをオープンしました。

路上生活から抜け出した方々の中には精神疾患や依存症の問題を抱えている場合もあり、金銭管理が困難であったり、通院による就業時間の制限や、近所付き合い等コミュニケーションに問題があるために、孤立してしまう方もいます。「カフェ潮の路」は訪問看護ステーションや精神科クリニックと連携しながら、そうした問題を解決すべく「仕事」と「居場所」を提供しています。

現在このカフェではボランティアの方々と6人の元路上生活者の方が働いています。1階でコーヒーを焙煎し、店頭とインターネットで販売しています。淹れたてコーヒーも火曜日〜金曜日の12時から15時まで販売しています。2階では火曜日と木曜日の11時から17時まで食事を提供しています。価格はワンコイン(500円)に抑え、多くの方が立ち寄れる場所を目指しています。

FITこうした場所を設けるに際して、何か工夫されていることはありますか
小林:このカフェを開けるに際して、路上生活者の方々に「居場所」と「仕事」を提供する他に、もう一つのコンセプトがありました。地域の住民と彼らの交流の場も作りたいと思っていたのです。幅広い世代の方々に路上生活者のことを知って欲しいと思いました。レクチャーなどという形式ではなく、カフェに来て座ったらたまたま隣が元路上生活者の人だった!というような、自然な空間を目指しました。そのため、外観もちょっとおしゃれにし、飲食業としての営業許可も取得しました。幸いこの近所には食事処がほとんどなく、近隣の商店や会社の方々が路上生活者の方と混ざってランチタイムに来てくれています。また、カフェ潮の路では700円券と200円券の「お福分け券」というものを販売しています。

海外で始まった「Pay it forward(次にくる誰かのためにお代を払うという仕組み)」を見習ったものです。路上生活者の事をもう少し考えて欲しいからという思いが背景にありますので1回限りのやり取りに留まらず、券の裏面にあげる人と利用した人の双方がメッセージを記載しあい、SNSで紹介しています。券を利用した人が名前とともにお返事を書くことで、券をあげる人にとってその人の存在は「路上生活者」という属性を抜けた「〇〇さん」という一人の人に変わります。この仕組みを活用した券をあげた人たちの、見える風景が変わることを期待しています。このシステムは好評で、現在では700円券が900枚近く売れ、200円券も200枚以上売れています。

FIT: カフェをオープンさせるに当たって苦労されたこととかありますか?
小林:30~40食分という多くの食事を作ることが大変でした。雨の中でもできる限りいい食材を求めて自転車で買い出しに出かけています。仕込みや調理は相変わらず大変ですが、食べに来てくれた皆さんのお皿がピカピカになるほど綺麗に食べてくれると嬉しく思います。

FITやりがいやエネルギーの源な何でしょうか。
小林:食に関して初めての体験をしてもらえることがやりがいと喜びの一つです。ここに来る人はこれまで食に恵まれてこなかった人が多いと感じています。このカフェで生まれて初めてマーマレードを食べたとか、パクチーの味を初めて知ったという人もいます。食事を通じて、少しずつ経験を積み上げて欲しいと思っています。


FIT: 今後の目標を教えてください
稲葉:FITの助成金で仕事をもっと増やしたいです。コーヒーやランチを出すだけでなく、例えばお弁当を作って配達・販売等もしたい。路上生活経験者が住むコミュニティの中で仕事を生み出せればと思っています。この辺りはご高齢で一人暮らしの方々が多いので、地域を助けることにもつながると思います。代わりに買い物をしたり、電球を取り替えたり、仕事のない人に仕事を作り、地域から認知され、見守られる・・・というサイクルができたらいいですね。まだ、色々と準備を整えるための時間が必要ですが、実現させたいです。

**つくろい東京ファンドでは週2回カフェを開いている他、コーヒーの販売、そして月に2回夜回り活動も行なっています。ボランティアとしてご興味あるかたは直接団体にご連絡ください。http://tsukuroi.tokyo/information/

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