認定NPO法人PIECES
FIT2019の支援先団体であるPIECES は貧困、虐待、不登校、高校中退、10代の妊娠、シングルマザー、子どもの生きづらさの背景にある「孤立」という社会課題解決のために活動されている団体です。理事の一人である青木翔子さんにお話を伺いました。
FIT:先ずは青木さんの経歴、PIECESに関わることになった経緯を教えてください。
青木:自分が育った環境や地域でも子どもたちの格差を感じ、育つ環境で将来が変わってしまうということに疑問を持っていました。児童施設や学習支援などのボランティア活動をする中で、勉強を教える中でも、隙間時間で色々な話題でおしゃべりをする事が多く、この子たちに本当に必要なのは勉強以前のメンタルの不安定さの解消、信頼できる人の存在、社会の中の繋がりだと思うようになりました。ただ子供の「支援」というと「学習支援」がメインとなっているのが現状で、これにもどかしいものを感じていました。先生でも、友達でもない、好きなものを通じて出会う大人で社会を知っていく場所を作りたいと思うようになりました。
そこで、大学院時代には、子どもたちとエンジニアの方々と一緒にゲームづくりを通じてプログラミングを学ぶ機会をつくりました。その機会は勉強というより、ものづくりを通じて人との関係が紡がれる場所になるように工夫しました。すると、学校の勉強が苦手でも、これには楽しく参加する子どもが多かったのです。そういった活動を、まだPIECESという団体名も決まっていない頃からこのPIECESのメンバーと行っていました。
FIT:PIECESの立ち上げ時で苦労したこと、または良かった点を聞かせてください。
青木:立ち上げ時に苦労したのは、助成金、寄付金、人材集めですね。また、社会では子どもの貧困、虐待、学習支援などといった課題が話題になっていましたが、そういった課題のラベリングをしてそれを1つずつ解決するのではなく、予防をして広く子どもたちの周りの環境を変えていきたいと思っていました。そういった問題意識をどう伝えるか、1年ほど試行錯誤する中で、「子どもの孤立」という言葉にたどり着きました。そこから、子どもたちの生きる地域に、「優しい間(ま)」を増やすことを目的に、Citizenship for Childrenという市民性を醸成するプログラムを立ち上げました。当初は参加者がいるのか不安でしたが、予想に反し、希望者の多いことに驚きました。多くの人が同じように思っていたがどのようにしたら良いか疑問に思っていたと知り、その思いを共有でき、仲間がいる事実が嬉しかったです。
コロナでどのような影響がありましたか
青木:学校だけでなく、子ども食堂など、子どもたちが集まる場所が全て閉鎖されてしまいました。当団体もオンライン化しましたが、集まっての研修や、地域同士の交流ができなくなりました。現在はコロナ禍で不安な状況下にいる子どもたちに関わっている人向けの情報発信、どのような心のケアをしたら良いか、他団体と協同しながら有益な情報を発信する取り組みも行いました。
FIT : FITでの寄付金はどのように活用されましたか。
青木:当団体のプログラム卒業生たちとのコミュニティを作ることに使用させて頂いています。まずは昨年の卒業生にニーズ等をヒアリングし、フォローアップも含めコンテンツの作成を進めています。たとえば、卒業生からは自分の活動を知って欲しい、地域だけの繋がりでなく、仕事面で相談できる人が欲しいなどの思いから、寄付者などPIECESの活動に理解のある人と繋がりたいという声と、寄付者の側からも卒業生のその後の活動を知りたいという声もあり、卒業生向けだけでなく、寄付者とも交流できるコミュニティを作ろうと計画しています。昨年は年間の卒業生が10名程度でしたが、今年の受講生は30-40名程おり、どんどん増えています。寄付者も現在250名ほどで合わせて300-400名のコミュニティを目指しています。
FIT: 青木さんが描く理想の未来をお聞かせください。
青木:お互いが尊重しながら生きていける、それが当たり前の世界になって欲しいです。どんな環境で生まれても、社会的なものさしやレッテルなどで傷づいたりしない環境で育ってほしいです。現在Citizenship for Children という名で子どものための市民性ということを中心にプログラムを掲げていますが、将来的には子どもの問題だけでなく、環境問題や紛争のこと、生きづらさを抱えるの方々権利の問題などに取り組むベースとなる市民性を醸成していき、いろんな人がそれぞれの個性を発揮しながら社会の担い手になっていると思える世の中になるといいなと思います。
認定NPO法人PIECES
https://www.pieces.tokyo/