一般社団法人チョイふる
一般社団法人チョイふるは、貧困家庭への食料品無料配達等をツールとし、困窮家庭の孤立を防ぐ活動を行っています。今回は代表理事である栗野さんにお話を伺いました。
居場所支援で子ども達と公園で遊ぶ様子
チョイふるを始めようと思ったきっかけを教えてください。
高校生まで市営団地で育ち、母親が父親の借金返済のために働き続ける姿を見て育ちました。自分自身は教育ローンと貸与型奨学金で大学に進学しましたが、妹は経済的理由で行きたい専門学校を諦めました。この経験から、支援制度にアクセスできるかどうかの「選択格差」を痛感し、本来たくさんある“はず”の選択肢を、少しでも身近に感じられる活動をしたいと思い団体を立ち上げました。
これまで活動を続けてきて困難だったことはどのようなことでしたか?
支援を必要とする層にアプローチすることが難しいと感じてきました。そして、そこに取り組むことが団体の存在意義だと考えています。さらに付け加えると、支援を必要とする層のニーズは非常に多様であり、一律の支援策ではすべてのニーズに応えることが難しいと感じています。支援を必要とする層ほど、経済的困難はもちろんのこと、複数の問題を同時に抱えるなど、問題の複雑化・複合化に対応することに困難を感じています。
団体を立ち上げて良かったと思ったことはどのようなことでしたか?
支援の成果を実感できた時に大きな喜びを感じています。具体的には、支援した家庭や子どもたちが生活の安定を取り戻し、前向きな姿を見ることができたときに、活動の意義を強く感じます。また、支援の輪が広がり、地域や他の団体、企業との連携が深まることで、より多くの家庭に支援が届くようになり、社会への影響力が高まることに喜びを覚えています。そして、団体メンバーと共に自分自身の成長を感じる瞬間にも大きな充足感を得ているように思います。
団体を立ち上げてからコロナ禍を経て、子育て家庭を取り巻く状況はどのように変化したと思いますか?
コロナ禍では収入減少や失業による経済的負担の増加が顕著で、特に非正規雇用の家庭では生活費の捻出が困難になっていました。また、給食が唯一の栄養のある食事だというお子さんは、休校中、健康状態が悪化していました。さらに、家庭内のストレスが増え、親子間で心理的負担が深刻化していたように感じます。コロナ禍を経てからは、以前より行政やNPOによる支援への依存度が高まり、特に食料支援のニーズが増加しているように感じます。
食料品の無料配達の様子
食料支援、居場所支援、繋ぎケアと3つの活動内容のどれも大切だと思いますが、現在一番重視したい活動はありますか?
居場所支援を重視したいと考えています。食料支援により、地域から孤立しがちな困窮子育て家庭とのつながりを少しずつ作れてきたところです。繋ぎケアを実現させるためにも、信頼関係を構築するための居場所支援を充実させる必要があります。また、既存の居場所をワンストップ子育て総合相談窓口としてアップデートしたいです。そうすることで、子育て家庭のための地域包括ケアシステムの一端を担えるのではないかと考えています。
FITからの寄付金はどのように使用されていますか?
困窮子育て家庭に提供する食材の保管にかかる費用に充てています。具体的には、拠点の家賃や設備費に使用しています。困窮家庭子育ての登録世帯が増え、それに伴い食品供給量も増加したため、フードパントリーの拠点を3カ所に増設しました。
今後はどのような活動の広がりを考えていますか?
既存の居場所事業をワンストップ子育て総合相談窓口としてアップデートすることで、困難を抱える子育て家庭に対して、一つの窓口で包括的な支援を提供することを目指しています。地域ごとに異なるニーズに応じた支援を提供し、他の自治体にも横展開することで支援の格差をなくすことができると考えています。また、デジタルツールを活用した支援強化にも力を入れ、オンラインでの生活相談支援やデジタル機器の貸与を通じた支援情報へのアクセス格差の是正を図ります。そして、支援ネットワークを拡充し、地域コミュニティや企業との連携を強化することで、家庭が必要な支援に迅速にアクセスできるようにしたいと思います。
居場所支援の子ども食堂の様子
私たちからはどのような支援ができるでしょうか?
今後、イギリス発祥の社会的処方(薬ではなく、人とのつながりを処方し、地域を元気にすること)を子ども支援に応用し、地域の力で子ども達を支える仕組みを作っていきたいと考えています。
そのために、皆様には「こどもリンクサポーター」として、行政・NPO・地域団体・医療機関などへの「橋渡し」の役割を担っていただきたいです。
「こどもリンクサポーター」の役割は、支援を必要とする子どもや家庭に寄り添い、彼らが必要とするリソースを見つけ、つなぎ、支援することです。専門的な資格や経験は必要ありません。むしろ、専門性がないからこそ、幅広い視点で困難を抱える家庭のニーズを理解し、多様なサポートを効果的につなぐことができる側面もあると思います。自分の持っているスキルや経験を生かして、コミュニティや家庭を支援する第一歩を踏み出していただけると嬉しいです。
一般社団法人チョイふる
https://www.choice-ful.or.jp/