特定非営利活動法人クッキープロジェクト
FIT2021の支援先団体であるクッキープロジェクトは、クッキーを通じて障がいのある人もない人も、会社員も学生もフリーターも、大人も子どもも、いろんな人が「まぜこぜ」になって暮らす社会を目指しています。2020年には既設の「おかし屋マーブル」に続き、新拠点のカフェ「マーブルテラス」もさいたま市にオープンしました。代表理事の若尾明子さんと理事の浜本由里子さんにお話を伺いました。
クッキープロジェクト 若尾代表理事(左)、浜本理事(右)
若尾さんの経歴と、団体を始めたきっかけを教えてください
一般企業を経て中間支援団体のNPOに勤めていた時に、「社会貢献」と簡単に言っても一般の方に実際にアクションを起こしてもらうのは難しいので、何かツールが必要だと感じていました。たまたまNPOを通じ、福祉作業所の方達が作ったクッキー販売に立ち会う機会が多くあり、味やラッピングの面で改善できる点があると感じました。せっかくなら「障害者が作ったから」ではなく「美味しいから」買ってもらえるクッキーを目指し、そのクッキーをツールとして多様性を尊重できる社会を目指したい、と思ったことがきっかけです。
浜本さんはいかがでしょうか?
元々別のNPOで働いており、初めは出張の手土産用にクッキーを購入していたお客さん側でした。少しずつクッキー販売等のイベントを手伝うようになっていき、クッキーへの良い評価を頂くようになるにつれ、皆さんがいつでも買いに来られる「常設店」を持ちたいという願いが強くなってきました。そんな折、埼玉県立小児医療センター内に、福祉作業所に関連した店舗の公募が行なわれることになったので応募してみたところ、ご縁があり「おかし屋マーブル」として常設店を持たせてもらえることになりました。2017年の開店当初から店長をやっています。
2020年に2店舗目となる「マーブルテラス」をオープンした経緯はどのようなものだったのでしょうか?
1店舗目の「おかし屋マーブル」は小児医療センター内にあるため、ご来店頂くお客様や営業日・時間など、医療センターありきになります。医療センターへ通院している高度医療が必要なお子さん達には喜んでもらっていたものの、通院には紹介状が必要なこともあり、購入してくれる方がかなり限定されてしまいます。私達の活動理念である「まぜこぜ」な、より広い客層の方達にクッキーをお届けしたいという強い想いはずっとあり、機会を待っていたところ、偶然、私達の活動理念に理解のある物件オーナーさんとの出会いがあって、カフェを開店できることになりました。
マーブルテラスで売られているクッキー類
これまで最も困難だったこと、また良かったことは何でしたか?
「マーブルテラス」をオープンした2020年が、新型コロナウイルス拡大のタイミングと同じだったことや、カフェ運営のノウハウを全く持っていなかったこともあり、今もまだまだ落ち着かない状況です。カフェスタッフはほとんどがボランティアですが、それぞれが「社会で生きにくい」問題を抱えています。彼らと向き合いつつ、カフェの運営も成り立たせるには今までとは違うマネジメント力が必要で、日々奮闘しています。
また、新型コロナウイルスの影響で来店者数や売上がかなり減ってしまったので、オンラインショップを始めましたが、取り引きしている約40の作業所さんの大きさが異なるクッキーやラッピングを、一つの箱にうまくおさめることがとても難しいです。そこで「箱プロジェクト」を立ち上げ、「まぜこぜ」な多様性を尊重できるような手作りの箱の検討を進めていますが、コストや耐久性、衛生面などの課題があり、まだまだ試行錯誤中です。
良かったことは、クッキーが誰かの励みになっていると実感できることです。特に医療センターで辛い治療に耐えているお子さんを笑顔にする力があり「あのクッキーがあるから病院になんとか通えています」という親御さんのお話を聞く時は心から嬉しく思います。売上が減って困っていた時に、医療センターの方のアイデアから、各医局に月に1回クッキーを届ける「置きクッキー」という新しいビジネスモデルが生まれ、より多くの方達に食べて頂けた時も嬉しかったです。
FIT資金使途について教えてください。
「マーブルテラス」で使用するオーブンを購入しました。このオーブンによって、カフェで提供できるメニューがかなり広がりましたし、クッキーを焼く温度調節も簡単になり、本当に助かっています。また、私達の活動内容の紹介動画を作成するプロジェクトも進行中です。あとは、オンラインショップ用のシステム改修や、ラッピングを含むオンラインショップ用のPRを学ぶセミナー開催費用に充てさせて頂きました。
マーブルテラスのキッチン
今後の展望を教えて下さい。
まずは「マーブルテラス」の運営を軌道に乗せることが目標です。「社会で生きにくい」人達と向き合いつつ、カフェの収益をある程度出す仕組みを作るのが本当に難しいです。3店舗目もいつかは出せたら良いなと思いますが、まずは今の活動を継続していける基盤を作りたいです。
医療センターに常設店を持ってからの5年間は、作業所さんのクッキーの可能性を強く感じた5年間でした。クッキーと一緒に、誰かを励ますモノを作り出せる作業所さん達の可能性を皆さんに届けながら、「社会で生きにくい」人達に少しでも居場所を提供し続けたいです。
私たちとして何かできることはありますか?
クッキーを皆さんの会社のカフェなどに置いて頂く、というのもありますが、作業所やマーブルテラスで働いているような、障害を持っていたり、精神的に「社会で生きにくい」と感じたりしている人達と「関わる」機会を持ってもらい、「まぜこぜ」を体感してもらいたいです。日本では、特性のある子は早い段階で他の子達から分断されることが多く、お互いに接する機会が少ないと感じています。そういう人達と実際に関わってみて初めて分かることもあると思いますので、いろんな人が「まぜこぜ」になって、クッキー作りや販売会などができる日がくれば良いなと考えています。
クッキープロジェクト理事たちとFIT2022実行委員取材メンバー
特定非営利活動法人クッキープロジェクト
https://www.cookiesproject.com/