特定非営利活動法人ADDS
FIT2020の支援先団体であるADDSは、自閉症があるお子さんとその保護者の方が、早期の適切な支援によって、可能性を最大限に広げられる社会の実現を目指します。理事のおひとりである加藤愛理さんにお話を伺いました。
Photo by 疋田千里
団体の設立に至った背景を簡単に教えてくれませんか?
12年前同じ大学院で発達心理学を学んだメンバーで事業を立ち上げました。以降も変わらず私たちが中心となって事業を継続しています。事業を始めようと思った原体験は、大学時代に発達障害があるお子さんの家に通い、保護者の方に教わりながら、家庭療育のお手伝いをする活動をしていた時までさかのぼります。なかなか自分の要求を上手く伝えられなかった子どもが、徐々に伝わる表現をしだして、お子さんたちの変化を自分の肌でダイレクトに感じました。自分たちの正しいアプローチ次第で、お子さんの可能性を広げられるという事実は、他の何をしている時にも得られない経験であったため、大学院卒業後は、NPOという形を取り、応用行動分析に基づく療育を親子に届ける活動を続けています。
コロナになって何か変化はありましたか?対面でできないことで制約が増えたのではないですか?
従来の来所型は残しながら、リモートでの形式を追加しました。お子さんと画面越しにセラピーを行う方法以外に、親御さんがお子さんを相手に何らかの課題をしている姿を見せていただいてそこにこちらがインストラクションを出しながら、フィードバックをするというやり方をしています。様子を見て「お子さんに伝わっていないようですから、こういった形で指示を出してください」とお願いしたり、「別の教材を使ってみましょう」など伝え、保護者の方にすぐ対応して頂くといった具合です。私たちはもともとペアレントトレーニングを基本にしています。そのお子さんにとって最も身近で一番の理解者になりうる親御さんが、支援方法を学ぶことで一番の進歩があると考えているからです。子どものテンポ感や細かな顔の表情などを汲み取ることはリモートでは難しくなります。しかし、親御さんが家庭でお子さんに指導ができるようになるためのサポートを支援の基本にしていたこともあり、今回のコロナ禍において提供できるサービスの幅が広がったと思っています。ほかには、コロナ禍で相談の機会を失い困っているご家族のために、kikottoというアプリで子どもについての心配事を相談できるプラットフォームを作りました。どこにいても、専門家に気軽に相談ができる環境を整えることを目指しています。
団体として今後どのような活動の広がりを考えているのですか?
立ち上げ当初は、自分たちがセラピストとして活動していたので、同じように直接支援ができる人材を増やせばいいのかと思っていました。しかし、今では、多くの親子に支援を届けるため、取り巻く人たちを支援の担い手にすること、どこにいても相談できる専門家がいる環境を整えることを目標にしています。先にあげたペアレントトレーニングもそうですし、セラピーのスキルをお伝えするような資格のコースやkikottoというアプリで子どもについての心配事を相談できるプラットフォームの作成ですとか、そうした思いで取り組んでいる事業です。
FITからの支援金はどのような形で使用されていますか?
私達のプログラムに興味を持っていただいた事業者さん向けた事業に使っています。ADDSでは自分たちで開発したAI-PACというシステムを使ってお子さんひとりひとりに合わせた課題を構成し、効果のある支援を行うベースにしています。体系だった支援がなされておらず、それぞれの先生の経験値や裁量で指導内容が決められているためその質を統一したいというニーズがある事業者さんに対して、こうしたシステムを使っていただくなどして、現場の質の向上をお手伝いすることに今回資金を使わせていただきました。
最後にこれを読んでいらっしゃる方にメッセージをお願いします。
先に少しお話したkikottoは、自分たちのリソースだけで開発は出来ませんでした。こういった新しい知識や見分を団体に取り入れることで、子どもたちの支援が広がり、そのスピードもアップしました。そのような何らかの専門性をもつ人ともさらにつながれたら良いなと思っています。社会により団体の活動が認知され、自閉症に対する早期の適切な支援の仕方が広まることを願って、今後も活動をしていきますので、一人でも多くの方に応援してもらえますと幸いです。
Photo by 疋田千里