FIT2019の支援先団体であるホームスタート・ジャパンは、未就学児が1人でもいる家庭に対し、「子育て」が「孤育て」にならないよう、家庭訪問型子育て支援を行う団体です。理事・事務局長の山田幸恵さんにお話を伺いました。

FIT：まずは経歴、団体に関わることになった経緯を教えてください。
山田：元々ホームスタートは、イギリスで約50年前に始まった活動で、日本では2006年に任意団体として発足しました。当時私は、各地の子育て支援団体と行政との協働の場づくりやネットワーク作りに関わっていました。そのご縁で初めてホームスタートのことを前代表から聞く機会があり、この仕組みがあれば、誰かの手助けになれたらという思いのある人たちが実際に活動することができる！行政とNPOとの協働や地域連携も進んでいく！とその時ビビっとくるものがありました。支援する側、される側という関係性ではなく、一人一人の主体性や自律性を尊重するポリシーにも感銘し、参加することにしました。ボランティア活動ではありますが、アセスメント・モニタリング・エバリュエーションといった評価プロセスがしっかりしている点も特徴で、2ケ月程度の期間でも利用者自身が自分の前向きな変化に気づくことができ、そのことがボランティアのやりがいになります。人と人とのつながりや気持ちを大事にする支援でありながら合理性も備わっている点もユニークだと感じました。

ホームスタートに出会う少し前に、地元新宿区で基本構想見直しのための区民委員の募集があり、子育て・教育・青少年をテーマにした部会に参加していました。当初は高校生や大学生のコミュニティ参画に関心があったんですが、関わっていくうちに、ライフステージごとの課題からライフサイクルを意識するようになり、源流と言いますか、子どもが産まれて人生が始まる時、そして同時に、親自身も初めて親になるその時点が最も重要な時期なのではないかと感じるようになりました。子どもたちが成長するにつれて直面する悩みや問題の多くは、自己肯定感の低さに関係しています。乳幼児期の親子の関係性が、子どもたちのその後の人生に大きな影響を与え、やがて自分が親になって子育てをする時にもその影響は続いていくという、循環があります。

FIT：団体の立ち上げ時で苦労したこと、または良かった点をお聞かせてください。
山田：実行部隊のメンバーのほどんどが、地域で子育て支援の現場を持っていたり、他の仕事があり、ホームスタート・ジャパンの活動と二足の草鞋を履いています。そのため、全員の力、エネルギー、気持ち、時間を束ねて最大限の成果に持っていけるようにコーディネートするのが大変です。でも、活動を始めて10年が経ち、全国各地で経験を積み上げてきた仲間も活動をリードする新たなメンバーとして加わるようになってきましたし、みんなの経験値を活かして、様々なアイディアが生まれる瞬間は満たされます。

立ち上げ時から現在も未だ苦労していることは周知広報です。SNSが不得意なんですが、もっと活用しなくてはと思っています。孤立した家庭になかなかホームスタートのことが周知しきれていないこともですが、ボランティアの方も、親の介護が始まったとか、孫が生まれたとか、それぞれのライフプランがあり、流動するため、常に募らないといけません。近所の支え合いのような活動とわかると共感されるのですが、イメージが湧きにくいのか、最初の一歩が理解されにくく、もっとコマーシャルのように、ホームスタートの活動を象徴するフレーズがあればと思っています。

FIT : FIT寄付金は活用できましたか。
山田：新型コロナの影響で、5月までは活動が見合わせになっている地域が多かったです。6月からは少しずつ活動は復活しています。使用使徒の一つであった広報冊子の作成は予定より多少遅れていますが、オンライン取材をしながら順調に進んでいます。元々、普段からリモートワーク型だったので、コロナで大きく運営方法が変わった訳ではありません。

FIT:　今後の展望をお聞かせください。
山田：まだまだ利用地域が限定しているので活動拠点を増やすことが大事です。現状の105地域から200地域をいつまでに達成できるか現在計画づくりをしています。子育て経験のある地域住民がホームビジターとなることで、訪問支援のすそ野が拡がり、地域の子育て力を底上げします。そして、訪問支援を利用した親自身が後にホームビジターとして支援者になってゆく循環も生まれると地域全体で子どもの育ちと子育てを支え合える未来志向のまちづくりにつながるのです。
今はそれを実現するための財源も不足なので、ファンドレイジングも課題です。現在一般寄付が少ないのでもっと周知し、応援してもらえるような仕組みも作らないとと思っています。


特定非営利活動法人ホームスタート・ジャパン
https://www.homestartjapan.org/