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公益財団法人 あすのば

FIT2019の支援先団体である「あすのば」は子どもの貧困実態を調査提言、中間支援、直接支援を行い、全ての子ともだちが希望を持って生活できる環境を目指す団体です。代表理事の小河光治さんに話を伺いました。


FIT:小河さんの経歴と団体を立ち上げた経緯を教えてください。
小河:自身も父親を交通事故で亡くし、ひとり親世帯で育ちました。私は運が良く、奨学金で高校、大学へと進み、あしなが育英会で働くようになりました。その後、2009年に初めて政府発表で日本の子どもの7人に1人が貧困にあるという数字を見て、当時の遺児の学生たちはどんなに育英会が大きくなっても、奨学金で全てのその子ども達を助けることは難しいと感じていました。2013年に子どもの貧困対策法が成立し、法律ができるだけでは貧困は解消されず、このままでいいのか、かつて奨学金という制度的恩恵を受けた自分には、社会に恩返しをすべき使命があるのではないかと思い、2015年に子どもの貧困対策センターあすのばを立ち上げることにしました。

FIT:団体を立ち上げて良かったことをお聞かせください。
小河:子どもの貧困対策法は去年改正があり、当団体の調査も参考にしてもらえました。また、婚姻歴のないひとり親の所得税控除適用も実現しました。婚姻歴のないひとり親の方が厳しい状況にあるにも関わらず、税制上不利な扱いを受けていた状況を改善できました。団体を立ち上げ、5年で法や制度改正に寄与するのは簡単ではないと思っていましたが、さまざまな方々のご支援もいただき貢献することができました。

FIT7人に1人が貧困と言われていますが、そのように感じないのはなぜでしょうか?
小河:かつてと違って衣料品はファストファッションやリサイクルショップもあり、外見をパッと見てお金に困っているのが見えづらいのが今日の貧困の特徴です。外見だけでいじめや不登校の原因にもなるので、貧困家庭でも周りに合わせようとしているのだと思います。
高い貧困率の一つの要因が非正規雇用の増加です。ひとり親のみならず、両親がいても世帯所得が低く、貧困に陥っている家庭も少なくありません。
とりわけ、ひとり親世帯の貧困率については、日本はOECD加盟国で最悪状況にも関わらずシングルマザーの就労率は高いのです。つまり働いているのに稼げていない、ワーキングプアの課題が大きいのです。この状態を変えないと根本的な改善は難しいのです。

FIT:色々な課題が重なっているようですが、今一つ変えられる制度があるとしたらどちらになりますか?
小河:教育費の負担を、家庭から社会全体にシフトすることです。貧困状態の子どもは自分の進路を選ぶという選択肢が金銭的制約から少なくなっています。子どもは小学校高学年で家の経済状況を理解し、自分がどんなに勉強を頑張っても金銭的余裕がなければ高度な教育を受けることは難しいとわかってしまうのです。このように、貧困家庭では、衣食住のお金の問題だけでなく子どもの意欲までも奪ってしまいます。日本の子育て、教育を全て家庭任せにせず、社会全体で支えるようにしたいです。例えば教育の無償化がさらにすすめば子ども達も選択肢が狭められ辛い思いをしなくてすむのです。大きな課題ではありますが、国や自治体、各党にも訴えながらもっと子育てをしやすい社会にしたいと思っています。

FIT:高等教育無償化という新制度でこのような問題は改善されますか?
小河:お金がないからと進学を断念したり、多額の借金をして進学する状況から比べると大きな制度改善と思っています。このように進学を希望する子どもには手厚い手当が可能になってきましたが、逆に進学をしない子どもには全く支援がない状態です。進学しなくても例えば人手不足が深刻な農業などで活躍できる場も多く、そのような子どもも支援する事で日本経済にも役立つと思っています。

FITFIT寄付金の活用状況はいかがですか?
小河:夏休みにさまざまな困難を抱える学生や高校生らが集る3泊4日の合宿セミナーに活用する予定でしたが、新型コロナ感染症のため中止となってしまいました。来年には合宿を開催したいと考えていますが、もし来年も開催できないとなれば、他の使途に変更させて頂くかもしれません。

FIT:今後の展望をお聞かせください
小河:子どもの貧困を無くすには制度の根本的な改善が必要です。簡単にはいきませんが、全ての子どもがお金を気にせず選択肢を広く選べる社会にしたいです。
このコロナ禍で世界中同時に辛い思いを経験し、自分も辛いがもっと辛い状況の人の想像力を働かせ、さまざまな社会課題が他人事ではなく、自分事に捉える人が増えたのではないかと期待しています。当団体の英語表記では、あすのばを“USNOVA”と書きます。USとは1人でなくみんな一緒、日本が抱えるこの課題を他人事でなく、自分事にして欲しい、ひとりぼっちじゃないよという思いで団体名の一部にしています。過去にも阪神・淡路大震災で多くのボランティアが集まり、ボランティア元年とも言われ、日本でもボランティア活動が定着することとなりました。このコロナも10年、20年後に振り返って大変だったけど社会みんなが子どもを支えるきっかけになったと思えるように、辛い子ども達に勇気を与え、誰も取り残されない社会になっていればと思います。

公益財団法人 あすのば
https://www.usnova.org/



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