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認定NPO法人ピッコラーレ

認定NPO法人ピッコラーレは、孤立している10~20代の若年妊産婦/母子の支援をしています。今回は、代表理事の中島かおりさんにお話を伺いました。

中島代表理事

ご自身の経歴と活動を始めたきっかけを教えてください。

助産院で2人目の出産をした時、助産師ってとても素敵な仕事だなと思ったことがきっかけで、大学に入り直して助産師になりました。その後、病院で助産師として働きながら地域での子育てサポートにも携わる中で、16歳で出産、子育てをしている女の子と出会いました。自分の妊娠・出産経験を生かし、周りの友だちのために一人で妊娠相談に乗っている彼女の姿を見て、「助産師である私にも、妊娠が困りごとになっている人たちのために何かできるのではないか」と思いました。
もう一つのきっかけは、2015年に、熊本市の慈恵病院で「こうのとりのゆりかご」の創設に携わった助産師の田尻由貴子さんの講演を聴いたことでした。講演の中で、慈恵病院には年間に何千件もの妊娠葛藤の相談が寄せられ、そのうち約30%が首都圏からの相談だという事実を知りました。誰のサポートもない中で、たった一人で命がけで出産をして、その後すぐに赤ちゃんを抱えて熊本まで来る人がいるという話に、大きなショックを受けました。また、その講演で初めて児童虐待死で最も多いのは0ヶ月0日、生まれたばかりの命であるということも知りました。妊娠の困りごとを安心して相談できる環境がないことで孤立に追い込まれている人たちがいる、東京でも信頼できる相談窓口を作らなければと思い、仲間とともにクラウドファンディングで資金を集め、2015年12月に「にんしんSOS東京」を開始しました。

団体を立ち上げて良かったと思ったことは?

「みんないつも『どうしたい?』って聞いてくれたから、今は自分で自分に『どうしたい?』って聞けるようになったよ」

これは、2020年6月に開設した若年妊婦の居場所「ぴさら」(フィンランド語で「しずく」の意味)で半年ほど生活をした利用者の言葉です。この言葉を聞いた時、「ぴさら」を始めてから一貫して、「一つ一つ自分で決めていいんだよ」というメッセージを日々の生活を通して伝え続けてきて本当に良かったと思いました。

また、2021年に発行した「妊娠葛藤白書」は、「社会には『妊娠葛藤』が存在する」ということを可視化し、社会に発信をする上でとても大きな一歩になりました。白書でまとめた内容を根拠に提言活動を続けた結果、妊娠葛藤を抱える人たちが使える法律や制度もでき始めています。団体を立ち上げ、仲間とともに活動を継続してきたからこそ、こういった社会の前向きな変化に寄与できるのだと思います。

2021年4月発行 「妊娠葛藤白書 にんしんSOS東京の現場から」

居場所づくりのプロジェクトは、今後はどのような展開を考えていますか?

project HOME(居場所づくりのプロジェクト)は、訪れる人が「ほしいものを自分で選びとれること」「生きていていいのだ」「ここにいていいのだ」と思えること、そして、「いつか自分のHOMEを見つけられること」、そのような願いを込めたプロジェクトです。

「ぴさら」は、様々な事情で妊娠期を安心して過ごすことができる居所がない、特に若年の妊婦の方たちによって利用されています。彼らにとって「ぴさら」が「ここにいていい」「生きていていい」「自分で選んでいい」と思えるHOMEであり続けられるように、これからも試行錯誤を重ね続けていくことはもちろん、今後は「ぴさら」卒業生たちが、自分たちの住みたい地域でHOMEを感じながら日々の生活を送れるように、妊産婦支援をしている団体をはじめ地域の多様なステークホルダーと出会い、つながり、対話を重ねながら、若年妊産婦への眼差しが優しい地域社会を創造するための取り組みを積極的に行っていきたいと考えています。

「ぴさら」での様子

FITからの寄付金はどのように使用されていますか?

「ぴさら」での生活は2ヶ月〜半年ほど。「ぴさら」卒業後、別の場所へ移っても「いつでも帰ってきていい」、そんな居場所作りを目指しています。卒業生が増えるにつれ、母子での里帰りのようなデイやショートステイの利用ニーズが高まっています。FITからいただいた寄付金は、妊婦の居場所「ぴさら」や、「ぴさら」の卒業生たちがいつでも戻ってきて将来について共に考えたり、子育てのサポートなどが得られるアフターケアの場の運営費、また、妊娠が困りごとになってしまう背景にある、「自分の身体のことは自分で決める」ということを阻んでいる社会構造を変えていくための啓発や広報活動の費用に活用させていただいています。

私たちからはどのような支援ができるでしょうか?

「お金がないので病院に行っていません」
「今日、泊まるところがありません」
「気がついたらお腹がおっきくなってました」
「自分も悪かったから」
「自分の身体に起こったことだから、自分でなんとかしないといけないと思った」

「にんしんSOS東京」には、このような言葉があふれています。

妊娠にまつわる困りごとの背景には、経済困窮やパートナーの不在、「性と生殖に関する健康と権利」(SRHR)を蔑ろにし、妊娠の自己決定を阻んでいる社会制度の不備など、社会的な課題が蜘蛛の巣のように重なり合って存在していることに、まずは1人でも多くの方に気づいて目を向けていただければと思っています。

世界から大きく後れをとっている日本の「性と生殖の健康と権利」をめぐる状況が前向きに変化し、にんしんが困りごとになってしまったとしても「助けて」と言える社会の実現は、市民の皆さんの理解と関心があることで可能になります。

「妊娠の孤立」や、孤立の先にある「0ヶ月0日死亡」がなくなり、誰もが自由に幸せに生きていける社会を目指して、ぜひ私たちの活動に関心を持っていただき、共に歩んでいただけますと幸いです。

代表の中島さん(後列右から2番目)とNPO法人ピッコラーレ メンバーの皆さん


認定NPO法人ピッコラーレ
https://piccolare.org/

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