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NPO法人eboard

2017年FITチャリティ・ラン支援先団体であるNPO法人eboard(いーぼーど)は、「学びをあきらめない社会の実現」をミッションに、ICT(Information and Communication Technology)を活用して教育課題の解決をめざす非営利団体です。インターネットでの学びのコンテンツを作成し、それを学校やNPOなどの教育現場に届ける事業を通して、貧困や不登校、地理的教育格差などの様々な理由により学びをあきらめてしまう子供をゼロにすることを目標に日々活動しています。


左から、今回インタビューを担当したレイモンド・ウォング(FIT広報チーム)、理事の前田頌太さん、代表理事の中村孝一さん、および西山由貴(FIT広報チーム)


今回は代表理事の中村孝一さんにお話を伺いました。

FIT: 中村さんがeboard を始められたきっかけを教えていただけますか。
中村:もともと私自身が大学生のころ、学習塾の講師をする傍ら、無償で勉強を教える場を子供たちに提供していました。通常の塾とは違い、そこに来る子供たちは学習環境に恵まれていないことも多く、はじめは学ぶことを閉ざしてしまっている子が多くいました。しかし、そういった子供たちでも丁寧に勉強を教えることで、少しずつ達成感を味わうことができるようになり、最終的には、目標としていた高校入学など自ら何かを成し遂げるための努力をするようになりました。

大学卒業後は、外資系コンサルティング会社に就職したのですが、社会に出てからも、このような勉強の機会をもっと多くの子供たちに提供できないか、教育現場とつながるような仕事をしたいと考えていた中で、eboardのアイディアが生まれました。私が一人の先生となって教えるのではなく、もっとたくさんの子供たちに機会を提供するような関わり方をするにはどうすれば良いか。そう考えていた中で、インターネットを使った分かりやすい学習コンテンツがあれば、より多くの子供たちに学習の機会を提供できるのではないかということで、教材開発を始めました。さらに、教育現場の支援が加われば、さらに多くの子供たちに寄り添えるのではないかということで、2013年12月にeboard としてNPO法人化しました。

FIT:FITを知った最初のきっかけを教えて下さい。
中村:FITのスポンサー企業にお勤めの方が紹介してくださいました。その方は、これまでも個人的にeboard を支援してくださっていて、その会社のCSR担当の方とつないで頂きました。その企業では、CSR活動としてより積極的にFITに関わっていきたいと思っていらっしゃったようで、2017年の寄付先団体選定プロセスにおいて当団体を推薦していただいたことがきっかけです。


FIT:一従業員の方の熱意がFITにつながったのですね。ところで、教材はどういったものなのでしょうか?
中村:教材の作成は、私たちeboardのメンバーが行なっています。メンバーは現職の教師や研究者、教育現場の経験者、学生、不登校経験者、子を持つ親、地方・海外在住者、学生インターンなど、教育課題に関心を持つ様々な人が関わってくれています。教材の音声については、教材の対象年齢に合わせた話し方や間の取り方など、ある種の「匠の技」が必要なので、私と指導経験が豊富なスタッフが担当しています。

内容については、ウェブサイトの「教材を見てみる」を見ていただくと分かるかと思うのですが、予備校や学校の授業のように、先生が出てきて一方的に解説をする形式ではありません。個別指導のように子供たちの目の前で語り掛けるような形で、問題を一緒に解きながら進んでいきます。勉強が苦手な子供たちに多い特性を分析していくと、この形式が一番彼らの関心や集中力を引くからです。問題集形式の場合、解説そのものが文字でつらつらと記載されているので、勉強が苦手な子供にとってはそれを読んで理解することが一苦労になります。eboardでは、答えに至るプロセスを動画で分かりやすく示すことで、途中で投げ出すことがなくなります。勉強を得意とする子のためには倍速再生ができるようにしたり、読解が不得意な子のためには解説に字幕を付けたりと、ご活用現場からの声や私たち自身が子ども達にも関わりながら、教材は日々改善がなされています。

FIT:作りこまれたこの教材を、もっと多くの人に知ってもらえると良いですね。
中村:そうですね。ただ、教材の中身ももちろんそうですが、私たちが一番大事だと思っていることは、大人たちが子供の学ぶ力をいかに引き出すかということだと思っています。教育現場の声を聞いてみると、先生たちの仕事があまりにも忙しく、子供と向き合う時間を十分に取れていないという現実があります。しかし、このeboard のコンテンツを使っていただくことで、教材準備に費やしていた時間を効率化することができ、その分子供たちの声に耳を傾ける時間を取ることが出来ます。席にじっと座っていられない子供たちに、学ぶことの大切さを教えてあげられるのは、人にしかできません。eboard というコンテンツを通して、教育現場の人々が、本当の意味での学びの大切さを教えることに注力できる環境を増やしたいと思っています。

FIT:FITからの寄付金はどのような形で使っていますか?
中村:無償学習支援を行うNPO団体を訪問する機会を増やすことができるようなりました。これまでにも、NPO団体としてeboardを活用したいというニーズはあったのですが、費用の面からなかなか手が回らなかったということもあり、そういった団体を訪問することで、教育機会の新たな窓口が広がっていくことは、私たちとしても大きなやりがいとなっています。具体的には、東京都内の生活保護を受けている家庭を支援しているNPO団体と協力してeboardのコンテンツを広めています。eboardを通して、NPO職員の方々および子供たちと、学習との距離がより身近になっていることを実感しています。今後は、より多くの教育者に向けて、私たちの思いやコンテンツを届けられるようなセミナーや公開研修会の開催も増やしていく予定です。

FIT:今、団体として困っていることはありますか?
中村:団体を立ち上げた5年前と比較して、ICTの認知は確実に広まってきており、学習のツールとして活用されてきています。それと同時に「eboard を使いたいけれども、端末の確保が難しい」といった声もきこえてきます。実は、2017年のFIT後に、FITに参加されたある参加企業から、社内で使わなくなった端末を寄付して頂き、設置までして頂いたことがあり大変助かりました。FITのご縁が、さらにこのような支援につながり、メンバー一同本当に感謝しています。同様に不要になったPCやタブレット端末などを、学習現場やNPO団体に届けてくださる会社が増えれば、より多くの子供たちにeboard を使ってもらうことができるようになりますので、お心当たりのある企業の方は、ぜひとも私たちまでご連絡ください。

FIT:この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
中村:実は、私たちが提供しているICTコンテンツはツールでしかないと思っていて、「学びをあきらめない」社会づくりを実現するためには、より沢山の大人に意識を向けてもらうことが大事だと考えています。一般的に、「社会貢献」や「子供の支援」はハードルが高く、教育に携わるプロでなければなかなか支援ができないと思われている方が多いと思います。そういったところでeboard のツールを使っていただくことによって、もっと教える側のハードルが下がれば良いなと思っています。例えば、今までは学習ボランティアや学生がいなかったために勉強を見てあげられなかったとしたら、子供たちと一緒にeboardの動画を見て一緒になって考える。近所の小学生に野球を教えているような関わりがあるのであれば、その延長で、子供たちの近くにいる大人としてeboardで勉強も見てあげる。そういったことで良いのです。子供の学びに気軽に関わる大人が一人でも増えることで、今までになかった多様な形での子供たちの学びの場が開ければ良いなと願っていますし、eboardはそれを可能にするツールなので、皆さんにも共感していただけたら嬉しいです。

eboard https://www.eboard.jp/
「教材を見てみる」 https://www.eboard.jp/list/

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