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特定非営利活動法人 日本アンプティサッカー協会

2018年FITチャリティ・ラン支援先団体である「特定非営利活動法人 日本アンプティサッカー協会(以下、JAFA)」は、手や足に切断障がいを持つ選手がプレイをする「アンプティサッカー」の認知度向上や競技選手の強化にむけた活動をしています。今回は副理事長の杉野正幸さんと、アンプティサッカー日本代表選手のエンヒッキ松茂良ジアスさんにお話を伺いました。

左から、今回インタビューを担当した松本陽香 (FIT実行委員長)、エンヒッキ松茂良ジアスさん(アンプティサッカー日本代表選手)、杉野正幸さん(JAFA副理事長)


FITJAFAさんはどのような活動をなさっているのでしょうか?
杉野:障がい者サッカーの一つである「アンプティサッカー」という、手や足に切断障害を持つ選手たちが行う競技の普及や認知度向上、競技自体の強化を推進しています。
具体的な取り組みとして、競技の強化という面では、年2回の日本全国大会の企画・運営、4年に一度開催される世界大会(ワールドカップ)へ日本代表選手を派遣するための一連の事業が挙げられます。また、認知度向上と普及活動という面では、学校を舞台としたアンプティサッカーの体験会や選手を派遣した講話を実施しています。
現在、障がい者サッカーに関する団体は日本に7つあります。そしてそれらを束ねる「日本障がい者サッカー連盟(以下、JIFF)」が中心となり、日本サッカー協会と連携の元、各競技の普及や推進を行っています。

ジアス:JIFFが設立されてから、年に数回、障がい者サッカーのイベントも開催しています。イベントではアンプティサッカーだけでなく、ウォーキングサッカーやブラインドサッカーなどの選手たちとの交流や体験ができます。アンプティサッカーは健常者でも楽しめるので、あえて片足を使わないアンプティスタイルでトレーニングをする人もいるくらいです。

杉野:厳密にはアンプティサッカーは障がいを持った人だけが競技参加できるスポーツなのですが、できるだけ健常者との交流を活発化したり競技を推進する目的でも、健常者も一緒に参画できるようなルールを検討しています。

FIT障がい者サッカーとの出逢いについて教えてください
杉野: 私はコスタリカで生まれ、幼いころからサッカーが生活に浸透している環境で育ちました。そして運命的なことに、サッカーを教えてくれた先生はセミプロとしてのスキルをもっていたのに、交通事故で足をなくした方でした。私自身、小学生の時に日本に住んでからサッカークラブで練習を積んでいたのですが、上達のスピードが遅く、中学校のレベルに進級できずにいるほどのレベルでした。就職した企業では、ブラジル人、アルゼンチン人、ペルー人の人たちなどに向けてスペイン語・ポルトガル語で新聞を発行しており、職場でも南米出身の仲間と触れ合う中で、社会人になって日本にいてもなおサッカーが生活の一部である環境にいました。ずっとサッカーが好きで「サッカーを仕事にしたい」という想いを抱いていたところ、Jリーグで監督を務めた方と共に、2000年に知的障がいの子供たちを対象としたサッカースクールを東京都中央区にて開校することになりました。2002年からはそのスクールを関根(現JAFA理事)と引き継ぎ運営し、知的障がいを持つ選手にサッカーを教えていました。

ジアス:私は5歳の時に交通事故で片足をなくし、その後、片足とクラッチを使って友人たちとサッカーを楽しんでいました。今思えば、そもそもそれがアンプティサッカーのプレイスタイルでした。そのことを認識したのは小学生の頃で、新聞を見ていたらブラジルのアンプティサッカー代表選手が大会で優勝をしたという記事を発見したことがきっかけでした。

FIT日本でのアンプティサッカーや協会の組織はどんなきっかけではじまったのですか?
杉野:2008年にエンヒッキ(以下、ヒッキ)と出逢ったことで、アンプティサッカーを知りました。会社の同僚であったヒッキの従兄が彼を紹介してくれました。知的障がい者サッカーの選手に混ざり、ヒッキが初めてサッカーをする姿を見た時は、片足とクラッチ(杖)を使ってボールを追いかける姿に驚きました。

ジアス:私は日本に来る前アンプティサッカーのブラジル代表としてプレイしていたのですが、日本に来たら大好きなアンプティサッカーがなくてとても残念でした。就職先の社内に障がい者サッカーを教えている杉野さんがいることを知り、知的障がい者サッカーの練習や試合に混ぜて頂きました。

杉野:私たちが出逢ってから1年くらいかけて、ヒッキ自身がアンプティサッカーをする仲間を集めてきてくれました。

ジアス:義肢装具士の方にご協力頂いたり、自分がアンプティスタイルでサッカーをしているシーンのビデオ映像を友人に作ってもらって、機会がある度に紹介しました。いざ、仲間を集めて練習をしてみると、私は指導者としては不向きであると実感したため、2回目の練習から杉野さんにお願いすることにしました。

杉野:まずは義足を外してクラッチを軸に歩くことから始めました。どういう指導をすればいいかメニューを検討し、ヒッキが実際にボールをつかって手本を見せるというスタイルで練習を続けてきました。常に、選手とともに一緒にうまくなっていこうという想いで練習に従事してきました。徐々に選手が増え、今では日本各地にクラブチームが設立し、日本代表選手は海外チームと戦ってベスト10を勝ち取れるほどのレベルになりました。

FIT活動を続けていく上で難しいと感じていることは何でしょうか
杉野:主に三つあると思います。一つは資金についてです。アンプティサッカーを「お金がないとできないスポーツ」にしたくないと思っています。とはいえ、現在は、ワールドカップへの選手の派遣や日々の練習など、各選手が費用の多くを負担して競技や組織が成り立っています。費用の問題でプレイを諦める選手がいてほしくないのです。支援者や仲間を募り、そういうした問題を解決していきたいです。

ジアス:世界にはプロとしてアンプティサッカーをしている選手もいます。将来的にはお金を払って観戦していただけるスポーツとして、「アンプティサッカーのプロ選手になりたい」という夢を持つ子供が出てくるような、そんな競技にできたら嬉しいです。

杉野:二つ目は持続的な人材の確保です。JAFAは組織が大きく成長してきているにも関わらず、ボランタリーベースで運営をしているため、メンバーの熱意に依存しがちであり慢性的にマンパワーが不足している状態です。専任のスタッフを確保し、より組織運営を円滑にしていく必要があります。JAFAでは運営メンバーを募集中ですので、是非ご応募お待ちしています!
三つ目は世界組織との連携・協業です。世界においてもアンプティサッカーの競技を統括する組織がありますが、各大陸や国・地域によって方向性が多々あるため、共通の目的意識を持つことが大変です。日本からは私やヒッキが世界組織の会議(コングレス)に参画し、日本としての見解や方針を常に発信しています。

FITやりがいを感じるのはどんな時でしょうか
杉野:特に選手たちが本気になって練習や試合に挑んでくれる時、そして、試合の結果に対して感情を露わにする選手の姿を見る時です。世界大会においても、選手たちが活躍する姿を見ることで、自分たちの取り組みが具現化していることを認識し、大きな喜びを感じます。また、体験会の参加者たちから「障がい者に対する”可哀そう”という目線が、”かっこいい“に変わった」というコメントを聞いた時も、日々活動を続けてきて良かったと感じました。

ジアス:一緒にプレイしている仲間の人生を変えたことを知った時です。日本でアンプティサッカーを始めた頃は、同じような境遇の人たちと楽しくプレイしたかっただけでしたが、最近は「アンプティサッカーを通じて前向きに生きることができるようになった」という仲間のコメントを聞くこともあり、本当に嬉しいです。

FIT今後の計画について教えてください
杉野:JAFAの創立10周年となる2020年の秋に、日本で国際試合を開催することを計画中です。主な開催の目的としては選手やチームの強化が挙げられますが、より多くの人に観戦してもらえる機会をつくることで、アンプティサッカーの魅力を多くの人に伝え、競技の価値を高めていきたいと考えています。アンプティサッカーの盛んなヨーロッパや南米に加えアジアの新興国を招き、2020年のパラリンピック終了後の年に、川崎市が取り組んでいる「パラムーブメント」を持続していくために川崎市と共催したいと考えています。過去にヨーロッパ選手権がトルコで開催されたときは、会場が5万人ほどの観客で埋まり、非常に盛り上がました。これは、競技としての魅力が高い証といえます。一方、この企画には多くの資金が必要となるので、資金調達も計画的に実施しなくてはなりません。アンプティサッカーの魅力をうまく訴求し、大会が成功するように資金面の調整も含めて計画を推進していきたいです。

FITFIT寄付金の使途を教えてください
杉野:学校を舞台とした選手によるアンプティサッカーの体験会・講演会の実施です。また、会の実施に必要な道具の購入やアンプティサッカーの紹介用動画の制作費として使わせていただいています。体験会・講演会は6月に幕張インターナショナルスクールにて開催しました。今後は、生徒さんだけでなくその親御さんなども対象に、選手が体の一部を失ったエピソードやアンプティサッカーと出逢い、サッカーを通じてどのように人生が変わったか、またアンプティサッカーがどのようスポーツなのかを知ってもらえるような企画を目指しています。また、選手との交流やアンプティサッカーの体験を通じて、障がい者とともにやる競技も「障がい者スポーツ」であることを知ってもらい、興味を持ってもらえることも開催目的の一つです。
動画については「普及編」「紹介編」というテーマで、アンプティサッカーの魅力を伝え、認知度を向上できるような内容に編集しました。

FIT最後に、FITに参加されるみなさまへのメッセージをお願いします!
杉野:FITには感謝しきれません。ありがとうございました!11月の日本選手権大会に是非お越し頂き、アンプティサッカーの面白さを味わって頂きたいです。アンプティサッカーには「障がい者のスポーツ」という印象を覆す魅力があります。ボール回しのスピード感やテクニックなど、試合を観て頂ければきっと夢中になるはずです! 選手権大会の会場にてお会いできますことを楽しみにしています!

ジアス:最近は選手のスキルレベルも高くなってきており、試合中はピッチから目が離せないくらい面白いと思います。11月の大会にて是非お会いしましょう!

■日本アンプティサッカー協会ウェブサイト:http://j-afa.jp/
※当団体では運営に携わるボランティアも募集中です。詳細はこちらからご覧ください!


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