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NPO法人Light Ring.

悩んでいる子どもや若者の身近な支え手となる「ユースゲートキーパー」を育成、支援することで、自殺・孤独孤立予防を実現している。代表理事の石井 綾華さんにお話を伺いました。

石井さんの経歴と、団体を始めたきっかけを教えてください。
大きく2つあります。1つ目は学生時代に自分がメンタルヘルス疾患を患ったことです。2つ目は高3で父親がアルコール依存症で他界したことです。その時に亡くなった父親を目の前に心の病は予防できたと思いました。父親がなぜメンタルヘルスで亡くなったか考えると、他に自分を助ける、救える、許せる人が周りにいなく、アルコールに依存してしまったと思いました。そして社会に必要な予防の仕組みが足りないということに気づき、全ての人に本音を言えるカウンセラーが身近にいる社会作りをしたいと思いました。そこで、ゲートキーパーという、身近な相談相手を社会に広げる組織として、父親のように一人で悩むような方に手を差し伸べたいと法人を立ち上げました。

立ち上げに向けて最も困難なこと、また良かったことは何でしたか?
明らかに困難なのは「支える人と支えられる人の分断」があることです。支え手を支える理解が社会的に不足しています。
行政からも専門家が子供を支える仕組みは理解されやすく支援を得やすいですが、私たちの活動、支え手を支えるということは理解がされにくい実態が続いています。「なぜ死にたい本人でなく、聴く友達をサポートするのか?」という質問やお問い合わせが多くあります。しかし、多くの子供は大人や専門家には言えないことを友達には打ち明けています。そのような子どもや若者を取り巻く初期発見者(一番初めにSOSに気がつく者)となるゲートキーパーの存在が理解されにくく、10年やっていますが、実態を知って協働頂くことが難しいです。

立ち上げて良かったことは、支え手が悩みを打ち明けてくれた時です。
友達から「誰にも言わないで欲しい」と悩みを打ち明けられる為、支え手は1人でそれを抱えてしまいます。LightRingを見つけてやっと言えて良かったと感じてもらうことも多くあります。誰にも打ち明けられないその子のサポートが出来たと思う瞬間がこの活動をやっていて良かったと思う時です。

FIT資金使途について教えてください。
今年度もringSというゲートキーパーの居場所活動を展開しています。従事するアドバイザー、スタッフ、サポートスタッフの謝礼、運搬費等に使っています。資金を活用させて頂くことで、ファシリテーターを増やし、念密なサポートができるようになりました。

新型コロナ感染症の影響はありましたか?
大変大きな影響があります。大学1年になり、上京、1人暮らしを始めた途端に授業は全てオンラインになってしまい、孤立する学生さんが多くいます。1人の時間が多いと自分が何らかのコミュニケーションに問題があり友達が出来ないのだと自己否定感が強まってしまう人が多く、初期発見者(一番初めにSOSに気がつく者)となるゲートキーパーがより必要な存在となっています。行政からの理解が相変わらず進まないことは重要な問題だと考えています。

今後の展望をお聞かせください
イギリスやシンガポールのようにゲートキーパー育成授業を義務教育化に汲み入れたいと考えています。どのような家庭環境に生まれても全ての子どもが友達の悩みをサポートする・自分も友達からサポートを受けられる、そんな人間関係を安全に結べる社会にしたいです。そして東京だけでなく、全国展開し、各地域の子ども若者主体のゲートキーパーコミュニティをつなげたいと考えています。今は大阪、滋賀も参加者がおり、それはコロナでオンライン化された利点になっています。ゲートキーパーの居場所を全国で作りたいと思っています。

ユースゲートキーパーにとって大切なスキルとは何でしょうか?
専門家との違いは2つあります。異変に気づく力と専門家に繋げる力です。
異変に気づく力とは、ユースゲートキーパーである友達は専門家のアウトリーチより早いタイミングでSNS等で異変に気づくことがあります。もう一つの専門家に繋げる力も重要なスキルです。傾聴も大事ですが、支え手も同年代で不安定になってしまうことも多く、支え手も1人で友達を支えようと思わず、辛くなったら専門家に繋ぐということも大切です。それによって、悩む子も気持ちを打ち明けられる人が増えより自殺予防力が社会全体で上がっていきます。

新型コロナ感染症拡大の影響を受けて中高生の自殺率は急激に上がりました。2020年8月と2019年8月の1ヶ月だけを比較しても自殺率は1.6倍と深刻化しています。当団体でも、友達の自殺がきっかけでゲートキーパーの仲間になりたいと連絡をしてくる人も増えました。自殺を未然に防ぐという、プリベンション(一次予防)もですが、不幸にも自殺が生じてしまった場合の 遺された人々に及ぼす心理的影響、後追い自殺をしない為にも3次予防のポストベンションも必要になった新たな局面にいます。

石井さんのその原動力はどこからきているのでしょうか?
それはLightRing.の活動で会う一人で支える子ども若者との出会いからです。ゲートキーパーをサポートできる大人や専門家の集団はなく、支える側、聴く側の子どもや若者たちの支援をしたいという気持ちがあります。仕事として実現するには困難もありますが、彼らの葛藤、誰にも言えない本音を聞けるとこの活動していて良かったと思います。今後も支え手のサポートが出来る大人でありたいと思っており、全国にいるゲートキーパーの仲間に支援の手を差し伸べられるよう今後も活動を広げていきたいと思います。

もし子どもや若者のサポートに関心を持っていただけたら、皆様のご支援やご協力を心よりお待ちしています。

NPO法人Light Ring.
http://lightring.or.jp/



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