特定非営利活動法人東京里山開拓団
特定非営利活動法人東京里山開拓団は、東京の荒れた山林を児童養護施設の子どもたちと共に開拓し、自然の恵みを活用しながら「ふるさと」という本当の心の豊かさを取り戻せる場所を自ら作る活動を行っています。今回は「東京里山開拓団」の代表である堀崎さんからお話を伺いました。
里山での活動の様子
堀崎さんの経歴と東京里山開拓団を始めたきっかけを教えてください。
DIYとアウトドア好きが高じて手つかずの自然を探し求めていたところ、親戚が所有している荒れた山林があることを知りました。東京に転職してきたばかりの2006年のことです。それからは休日に一人夢中になって道や広場を伐り拓きました。地道という言葉の通りの作業です。次第に額に汗して自然と深く関わる開拓そのものの魅力にどんどん引き込まれていきました。やがて家族や友人、知人も呼ぶと、子どもから大人まで年齢を問わず皆に楽しんでもらえることがわかり、それならもっと社会に貢献できる活用が可能なのではないかと考えました。学生の時に児童養護施設など、子どもを支援するボランティアを経験していたこともあり、活動の構想を描いて、2009年に東京里山開拓団を立ち上げました。
里山での活動の様子
立ち上げに向けて最も困難なこと、また良かったことは何でしたか?
活動の柱として児童養護施設の子どもたちと一緒に里山開拓に取り組む構想を立てたのですが、設立から3年間、活動に参画する児童養護施設を見つけることができず、本当にこの構想が成り立つのか、活動方針に悩みました。その間やめていった会員もたくさんいます。
今では東京都内の5つの児童養護施設と連携して、環境保全と社会福祉の一石二鳥で、環境省と厚生労働省の双方から表彰される前例のない取り組みとなりました。また、自然とボランティアの力を活用して、コストをかけずに最大の効果を生み出すという社会福祉の理想形とも言える運営に近づいてきました。ボランティア活動を通して、普段の仕事や生活のなかでは会うことのない人たちと共に、高い志を共有して一緒に作り上げていく心豊かな経験も重ねています。
FITからの資金はどのように使用されていますか?
児童養護施設の子どもたちと荒れた山林を伐り拓き、ふもとの空き家を改修するための材料費、道具費、交通費、食材費などの直接経費に使っています。
活動拠点は、東京都八王子市美山町の山林です。午前中は児童養護施設の子どもたちと広場や道の整備などの開拓や、四季の自然の恵みを活用した様々な企画を行い、お昼は手作りした石かまどに枯れ木を集めてたき火料理を作り、午後はハンモックやツリーハウス、ジップライン、ブランコ、木の工作、自然観察などを楽しむ自由時間という構成で過ごしています。子どもたちは自然のなかにたくさんの発見をして、直接つながり、それを心から楽しんでいる自分に気づき、自分から周りに心を開いていきます。
また、ふもとでゴミ屋敷になっていた築300年の古民家を、児童養護施設の子どもたちや地元の方々にもご協力いただきながら、半年間の素人DIYで改修し、2023年7月に児童養護施設の里山付き別荘「さとごろりん美山」としてオープンしました。これから里山の恵みを生かして心豊かに過ごす里山ライフ実践の場、子どもたちがいつでも戻ってこられるふるさととして運営します。
「さとごろりん美山」オープンの様子
東京里山開拓団の活動について、私たちからはどのような支援ができるでしょうか?
私たちの活動は、まだまだ小さな点のような活動です。ボランティア会員約30名が都内の5つの児童養護施設と連携して、八王子の小さな里山とふもとの別荘を活動拠点としているにすぎません。全国の児童養護施設には約3万人の児童が暮らしていますが、それも虐待や貧困で苦しむ子どもたちのごく一部にすぎません。そして、荒れた山林や空き家は日本国中に無数にあります。都心からたった1時間のところにもあふれています。
広報面で、私たちの活動をひとつのモデルケースとして伝えて、社会課題の捉え方やその克服方法のあり方を深く考える機会を提供し、同じような社会貢献活動を広く横展開していくお手伝いをしていただけるとありがたいです。
今後はどのような活動の広がりを考えていますか? 今後の展望をお聞かせください。
私たちは、八王子の里山とふもとの別荘を拠点としてふるさと作りをじっくり継続しながら、この活動を他の里山や児童養護施設にまでどう広げていくかを模索しています。ただ、里山は定期的に通えてこそ、里山として維持されるものです。遠いところにある里山で児童養護施設との活動を、私たちが直接行い、継続することは困難です。
そこで、様々な方と連携して活動を横展開していきたいと思っています。特に全国各地には、里山保全や児童養護施設支援を行う団体はそれぞれたくさんありますが、関心分野の違いからお互いの接点はほぼありません。そんな方々同士の交流の機会を作り、私たちの経験やノウハウを伝えながら、本気で継続して関わってくれる同志を全国各地に増やしていけたらと思っています。
最後にこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
皆さんは、社会課題の克服ってなんだか専門家が複雑な方程式を解かなければいけない難問のように思われているかもしれませんが、私は全くそうではないと思うようになりました。むしろ私たち一人ひとりが周りをよく観察し、自然の恵みや自分・仲間の力をフルに生かし、逆境をチャンスとして捉えて、試行錯誤のプロセスを楽しみながら克服していく姿勢、つまり「開拓者精神」を発揮することによって、一番良い形で社会課題を克服できるはずだと考えています。開拓者精神を発揮して、私たちの心豊かな社会作りに一緒に取り組んでいきましょう!
[左から]代表の堀崎さん(4番目)、会員福田さん(2番目)とFIT2023実行委員の興津、黄田、大西、山本
特定非営利活動法人東京里山開拓団
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