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​​特定非営利活動法人ユースコミュニティー

特定非営利活動法人ユースコミュニティーは、大田区を拠点に学習支援・居場所づくりの活動を実施し、地域の人たちの協力を得ながら困難を抱えている子どもたちに学習環境を提供し、「困っている子どもがいたら、大人が助ける」あたりまえの社会の実現を目指しています。今回は、代表理事である濱住さんに加えて、ボランティアスタッフの中間さんと櫻井さんにお話を伺いしました。

インドスタディツアー学習支援の様子

濱住さんの経歴とユースコミュニティーを始めたきっかけを教えてください。

前職で労働組合に従事していた時に参加したシンポジウムの分科会で、教育格差について、特に、ひとり親家庭の経済的困難等の話を聞き、そうした状況の子どもや家庭を支える学習支援・居場所づくりの活動を行っているボランティアに興味を持ちました。あまり知られていないかもしれませんが、現在、大田区の調査によると、生活困難層は12.8%に上り、就学援助を受けている家庭は20%を超えています。その時、学習支援・居場所づくりの活動が、実際に自分の家の近所で行われていることを初めて知りました。大田区のケースワーカーの有志がボランティアで行っている活動です。その活動にボランティアとして参加するうちに、子どもたちを取り巻く環境の難しさを肌で感じ、多くの気づきが得られました。そこから、2012年に大田区の助成金を受ける機会を得て、ユースコミュニティーを設立しました。

インドスタディツアー代表の濱住さん

最も困難だったこと、また良かったことは何ですか?

設立前に知り合ったメンバーにも立ち上げの一員になってもらうなどスムーズに進んだ面がある一方、都営・区営住宅の子どもたちに参加してもらうため、当初、ちらしのポスティングなどを行いましたが、参加者を集めるのが非常に困難な時期がありました。NPOが運営するアットホームな塾というスタイルを目指して、ケースワーカーや行政からの呼びかけなどを通して、信頼を積み上げてきました。学習支援を支えるボランティアも多く集まり、子どもたちと一対一の割合でサポートでき、コミュニティに受け入れられる条件を築くことができました。

今では、活動を通じて、子どもたちにプラスのインパクトを与えていることを実感し、自分の心の支えともなる出来事をしばしば経験しています。例えば、社会人のボランティアは本業がある中、忙しい時間をやりくりしながら、活動に参加していますが、そうしたことが子どもにダイレクトに伝わり、NPOの活動ならではの信頼関係が生まれます。子どもたちから「ここの先生たちは、自分の仕事が終わってから疲れているだろうに、いつも来てくれる。時間をやりくりして勉強を見てくれて、自分たちのことを心配してくれている。だから僕もちゃんとやらなきゃね」といった言葉を聞くと、活動を続けていく原動力と前向きな姿勢をもらうことができます。

ボランティアスタッフの皆さんにユースコミュニティーでの経験についてお伺いしました。

中間さん(大学3年生):ボランティアを始めたのは、高校2年生のときで、大学入試の際に、ボランティア活動が評価されると考えたことがきっかけでした。始めた頃は長く続けるつもりはありませんでしたが、スタッフ同士で食事に行くなど仲が良いことから居心地が良くなり、現在はボランティアリーダーとして活動に参加しています。ボランティアを続けてきて、子どもから受験に合格したとか、大会で勝ったという話を聞くと、子どもたちの成長を感じることできて嬉しいです。また、私は、コンビニでアルバイトをしていますが、お客さんで来る子どもへの接し方がボランティアを通じて身につきました。

櫻井さん(社会人):私は、IT企業に勤めていますが、コロナ禍で在宅勤務が続いたため、人と触れ合い、職場などのコミュニティとは違う環境で新しいことにチャレンジしてみたいと考え、学習環境の雰囲気が良かったことや仕事とボランティアの両立がしやすい環境であることからユースコミュニティーに参加しました。現在は、ボランティアに参加して半年になりますが、東京の子どもたちは、国際色豊かだと感じます。私自身は、宮崎県出身ですが、私の小学生時代とは全く違う環境の子どもたちに触れられるので、私自身にとって学びが多い環境です。私は、学生時代から現在まで、教育とは全く関係のない環境で過ごしてきたので、勉強が苦手な子どもなど様々な子どもたちへどのように接していくのか悩みつつ、教育関連の本を買って勉強するなど、子どもたちの教育に興味をもつようになりました。ボランティアをはじめて嬉しかったことは、子どもたちに勉強を教えて「あ、わかった」と返事がきたときです。また、子どもたちと一緒にイラストを描きながら会話をする日常が楽しく、私にとって子どもへの接し方を学べる環境だと感じています。

濱住代表(前列中央)と[後列左から]櫻井さん(3番目)、中間さん(4番目)、およびFIT2023実行委員の嶋、猟山、佐藤、山本

FITの寄付金の使途について教えてください。

学習支援・居場所づくりの活動の実行にあたり、教材開発、特に高校進学を目的にした支援に用いる教材に重点を置いて使用します。都立高校を主眼に置いたカリキュラムに沿って効果的な内容を作成し、活動の性質上不可欠な複数のスタッフが進度等、記録を共有化できる教材を開発します。

今後はどのような活動の広がりを考えていますか?

地域に根ざした居場所づくりと学習支援のしくみづくりを広げていきたいと思います。例えば、町会といったコミュニティでも活動を支援するスタッフを育てる研修を私たちが行ったり、サポートしたりすることで、大田区の多様な組織やコミュニティが主体となり多くの活動が行われるようになります。

地域の課題には地域で応えていくという考えを持っています。全国一律に展開するといった一元化した活動とは別に、地域を地域で支えるしくみをつくれれば持続可能です。そのため、大田区に軸足を置いていますが、学習支援・居場所づくりの取り組みを広げる上で他区の類似団体とも交流しています。

私たちからはどのような支援ができるでしょうか?

子どもたちの居場所づくり「自由塾」の開催場所をご提供いただけるとありがたいです。企業や組織の会議室、カフェ等、利用できるスペースをお借りする機会を増やせると、参加する子どもたちもNPOの塾としての居場所に愛着を感じてくれるようになります。

また、ユースコミュニティーは、スタッフの定着率が非常に高く、参加してくれるボランティアスタッフにとっても学びのある居場所になっています。会社とは違う、フラットに話せるコミュニティとしての役割を担っています。現在、新しいボランティアの方も募集していますし、ボランティアスタッフのグループを引っ張ってくれる存在になってくれると嬉しいです。

最後にこの記事をよんでいる方にメッセージをお願いします。

勉強くらいならいつでも教えてあげると皆が言えるような優しい社会をつくっていきたいと思っています。皆さんも、学習支援や子ども食堂等、自分の居住する地域で行われている活動について理解し、参加してみることが大切です。例えば、子ども食堂では少額の費用を負担して誰でも利用でき、それが支援につながる取り組みを行っている団体もあります。社会における課題を自分ごと化することから色々な視点に気づくと思います。

キャンプ集合写真学習支援に参加する子どもたちとボランティアスタッフ

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https://www.youthcommunity.net/

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