過去のラン

NPO法人ぷるすあるは

FIT2017支援先団体「ぷるすあるは」は、精神障がいやこころの不調、発達凸凹の親を抱えた家庭や、さまざまな事情の中で頑張っている子どもたちを、絵本やウェブサイトなどの情報コンテンツを通して応援しています。

とても心地よい風が吹き抜ける快適なオフィス空間で、イラストを担当している細尾ちあきさん(精神科の看護師)と、医師で代表の北野陽子さんが出迎えてくれました。精神科診療所や精神保健福祉センターに携わったご経歴を持つお二人ならではの活動内容と今後の展開をお伺いしました。


イラスト担当の細尾ちあきさん(右)、今回インタビューを担当した佐川顕子(FIT広報チーム)

FIT:ぷるすあるはの主な活動内容を教えてください。
北野:メンタルヘルスについてのコンテンツ制作や発信に取り組んでいます。メンタルヘルスの領域に広く関わる活動ですが、特に「精神障害を抱えている親御さんをもつ子どもたちのケア」を大きなテーマとして掲げている点が特徴だと思います。

日本では今まで注目されてこなかった分野の支援です。例えばお母さんがうつ鬱になってしまったとか、お父さんがアルコール依存症だとか、親が心の不調を抱えている子どもたちの気持ちを理解し応援しています。

具体的には「家族のこころの病気を子どもに伝える絵本」「子どもの気持ちを知る絵本」シリーズの絵本制作と「子ども情報ステーション」というウェブサイトでの情報発信という2つが活動の中心です。最近では行政機関、様々な団体とのコラボレーションも増えてきました。

細尾:例えば、埼玉県立精神保健福祉センターと連携し、大学のカフェテリアでトレイに敷くシートを制作しました。広くメンタルヘルスのことを知ってもらい、心の健康を保つことを伝えるちょっとした啓発ツールです。「ちょっとしんどいテーマ」をほっこりと表現できればいいな、と考えています。


FIT: ぷるすあるはを始めたきっかけについて教えてください。
北野:私たちは精神保健福祉センターでの同僚でした。当時、精神疾患や依存症の家族がいて悩んでいたり気持ちが落ち着かない子どもたち向けにプロジェクトが立ち上がり、そこで使うツールを企画していました。

行政機関はいろいろな種類の啓発リーフレットを作ることが多いのですが、精神障がいとはこういうもの、という説明を子ども向けに分かりやすく、温かみのある手作りのもので伝えられたらという話し合いの中で、紙芝居を作ることにしました。

この紙芝居の絵やストーリーが、子供たちにだけではなく、大人たちにも評判が良く、「伝わった」ことが素直に嬉しかったですね。その時に、「そうか!このテーマは、必要だけど今までなかったんだ」と気づいたのでした。

リサーチをしてみると、日本には「精神障がいやこころの不調を抱えた家族を持つ子どものケア」をテーマとした活動や情報がほとんどありませんでした。「ないなら私たちが新しいコンテンツを目指して立ち上げよう」という想いがぷるすあるは設立の純粋な動機かもしれないです。そのテーマを絵本にしたところから活動が始まりました。


FIT: ケアを必要としている子ども達はどのように情報を得るのでしょうか?
北野:ぷるすあるはをスタートした時点ではテーマは絞ったほうがいいとアドバイスされ、絵本制作に絞りましたが、ただ、絵本だけだと届かないメッセージがあります。実際に年に1冊、2冊の発行だと追いつかないですよね。そこでWEBでの情報発信も始めました。それが「子ども情報ステーション」です。WEBでしたら幅広いテーマをリアルタイムで発信できるし、無料で情報を届けられます。

ニーズが多いのが、ダウンロードのコーナーです。保健室の先生がダウンロードして校内にポスター掲示したり、ツールとして使ってくれたりしているようです。

ケアが必要な子どもたちが、自らダイレクトに情報を得るのは難しいと思います。だからこそ、私たちはケアが必要な子どもの周りにいる大人たちに一人一人に情報を届けたいと考えています。

不調を抱えた子ども本人やご家族、教育や福祉など、子どもに関わる仕事をしている方に、いかに情報を届けるかということを考えた結果、こうしたツールが生まれました。


FIT: お二人を突き動かすエネルギーってなんでしょうか?
細尾:楽しさかなと思います。楽しいことをしたいし、ワクワクしたい。楽しくなければよいものはつくれない。楽しいときは一気に自分の中でバババーッとイメージが膨らみます。

そして、生み出すからには、使えないものは作りたくない。妥協をせずにとことん調べ物もします。今、自分にできるベストな制作をしたいですね。

北野:絵本がきっかけで何か変わることがあったり、コミュニケーションが生まれたりすればいいと思っています。「ぷるすあるは」は、+α(プラスアルファ)をもとにした造語なので。ゼロから1になれるように、視点が切り替わるちょっとのきっかけになればすごく嬉しいです。

私たちの作ったコンテンツを「届ける必要のある人」がいることかなと思います。取り組んでいるテーマがとてもデリケートなので、正直難しい部分があります。届ける先の人ってみんな一人ひとり状況が違います。年齢、家族状況、個性、抱えているものや想い、何もかもが違います。だから、どんなテーマのものをつくって、誰にどう届けるのか、を考えながら活動するのはすごく難しいです。

「すごく共感しました」という意見もたくさん頂きますが、同時に「私の体験はこんなんではなかった」「こんな気持ちにはならなかった」という意見もあり、良いと思って作ったコンテンツが逆に誰かを傷つけることもあります。ただ完成形がないことがわかりつつも、完成形を探して、「届ける必要のある人」のために、ずっとずっと考え続けながら活動をしています。

FIT:今後の課題を教えてください。
北野:私たちが取り組んでいるこのテーマを広く知ってもらうことに難しさがあると思います。活動を始めて7年になりました。狭い専門業界では認知されてきましたが、果たして必要としている人にどれくらい認知してもらっているでしょうか。

マスに向けての情報発信も必要です。情報やケアが本当に必要な人、ひとりひとりに情報を「届ける」難しさを感じています。

私たちの取り組んでいるこの分野にフィットするネーミング(タイトル)がないということも課題の一つであると言えます。広く知ってもらうためにはネーミングが必要だなと思います。

例えば「うつ」は広く世の中で認知されているので、その単語から、多くの人が「うつ」はどのような症状なのか想像できますよね。ネーミングがつくことで、キーワードとして取り上げられる場面も増えるでしょうし、人々の問題意識が形成されていくと思います。
なにか良いものがありませんか?

あとは、代表の立場として、組織を継続していくためには、財務体制をきちんと整えていくことも課題であると考えています。

FIT: FITの取組みについてどう思われますか?
北野: FITを通じて、活動領域を広げることができ、社会に広く知ってもらうためのきっかけをつくることができたと感じています。

ここ数年、行政機関や各種団体とのコラボレーションが増えてきていますので、FITに参加している企業とも何か一緒に取り組むことができないか、模索していきたいですね。

細尾:まずは、ありがとうございます。原画展に是非来てください!!(細尾さんが描いた絵本の原画展を都内で企画中です)

支援金という形で、これだけたくさんの企業の皆さんがぷるすあるはに協力してくれているということを実感し、どうにか還元したいと思っています。今年は10キロランに挑戦します!

NPO法人ぷるすあるは https://pulusualuha.or.jp/
子ども情報ステーション https://kidsinfost.net/

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005