特定非営利活動法人サンカクシャ
特定非営利活動法人サンカクシャは、東京都豊島区に拠点を置き、親や身近な大人を頼れない15〜25歳くらいまでの若者が孤立せず、自立に向かえるよう、若者の社会参画を応援する活動を行っています。今回は、サンカクシャ 企業連携担当の釆見さんにお話を伺いました。
サンカクシャ設立のきっかけを教えてください。
サンカクシャは2019年に代表理事の荒井が設立しました。
設立の原点は、荒井が大学時代に一人のホームレスの方と出会ったことでした。
道端で声をかけられ、そのままファーストフード店で会話が盛り上がったことをきっかけに、定期的に待ち合わせをして、会ってはただ会話をするといったことを続けていくうちにホームレス支援に関心を持つようになり、自身もボランティアとして活動するようになりました。
ホームレス支援をする中で驚いたことは、路上生活をしている人の中に、当時の荒井と同年代(20代)の若者が、それなりにいたことでした。自分と年齢がさほど変わらない人でも、生まれた環境によってその後の人生が大きくかわってしまう。そこで「ホームレスになる手前の支援が必要なのでは」と感じ、若者年代へと活動の幅を広げていったことが、今のサンカクシャの設立に繋がっています。
なぜ「若者支援」が必要なのでしょうか。
子どもの貧困という言葉とともに、子どもの支援は広がってきましたが、若者の支援はまだまだ足りていません。、幼少期から虐待や育児放棄などがあっても、誰にも気づかれずに、十数年もの間ただ家で堪えてきた若者は、実はそれなりの数でいると推測しています。約20年もの間、学びや一般教養の機会を奪われ身体だけが大人になってしまった若者たちにとって、頼れる人も十分にいない中、一人で自立することには、かなりのハードルがあるというのは皆さんにもお分かりいただけるかと思います。彼らは、20歳前後になってようやく親から逃げ出してきたものの、自分たちで安定した仕事や住まいを確保することが難しく、路上生活やネットカフェ、時には見知らぬ人の家を転々とする生活を送っています。こうした家庭に頼れない15〜25歳の若者に対して、「居場所」「住まい」「仕事」の支援を提供することで、社会参画をサポートする必要があると感じています。
これまでの活動の中で印象に残っているエピソードを教えてください。
サンカクシャは現在、居場所の拠点を1か所、シェアハウスを4拠点(ほか個室のシェルターも複数保有)、今年の7月に開業した就労支援拠点1か所を運営し、延べ500名以上の若者と関わってきました。現在も常時100名ほどの若者と接点を持ち続けています。印象に残っているエピソードの1つとして、サンカクシャにつながったとある青年との話があります。彼は、サンカクシャに繋がった当初はほとんど無表情で、口数も少なく、こちらからの質問に対してほとんどリアクションができない状態でした。
最初は、スタッフが「信頼できる大人」であると信じてもらうために、リアクションがなくても、彼に対してひたすらに話しかけるようにしました。すると次第に、彼も少しずつ返事をしてくれるようになりました。次に、サンカクシャを応援してくれている色々なまちの人の元へ繋げるようにしました。まちのコーヒースタンドのお手伝いや、イベントの運営仕事、地域のごみ拾いなど…とにかくいろんな人と繋いで、気付いたらサンカクシャを介さずとも、まちの人が彼と仲良くなり、彼も自分の足でまちに繰り出すようになり、明るさを取り戻すようになりました。これは私の憶測ですが、信じられる大人はたくさんいるんだということに気付いてくれたのではないかと思います。
彼とは、サンカクシャと繋がって2~3年となるのですが、昨年に行政書士の資格を一度の挑戦で取得し、つい先日、とある企業から内定をいただきました。内定後にその若者が発した「サンカクシャや街の人たちに恩返しをしたい」という言葉がとても嬉しく、この仕事をしていて良かったと感じた瞬間でした。
【各拠点の様子】
居場所の拠点
シェアハウス
仕事の拠点(2025年7月にオープン)
FITの寄付金の使途について教えてください。
サンカクシャは2025年の7月に「仕事のサポート」に特化した新拠点を開設しました。FITの寄付金を活用し、若者が安心しながら仕事について考えられるプログラムを実施したいと考えています。サンカクシャが関わる若者の多くが人間関係に不安を抱えており、企業に送り出してもすぐに戻ってきてしまうケースもあるため、まずは「就労準備」の期間が必要だと考えています。
新拠点では、若者の就労の場として、飲食事業も展開します。スタッフがシェフとなり、若者がホールや補助業務を担当する形で、週1回程度の営業を想定しています。こうした活動を通じて「若者が自信を培い、仕事の興味や適性について安心しながら考えられる場にしたい」と考えています。
この活動を続けるにあたり、大切にしているものを教えてください。
サンカクシャが大切にしているのは、若者を「支援の対象」としてではなく、一人の人間として向き合うこと。「一緒に悩み、一緒にご飯を食べ、一緒に遊び、一緒に考える時間を共有したい」という姿勢が根底にあります。
「支援の結果、○○人就職しました」といった数値を追うのではなく、「無口だった人が、少しだけ笑うようになった」といったささやかな変化を大切にしていきたいと思っています。
最後にこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
まずは誰にも知られずに虐待を受けてきて、今も誰にも頼れずにひっそりと今日1日どうやってやり過ごすか必死になっている若者がいることを知って欲しいと思っています。そしてもし「若者支援は必要だ」と共感いただけるのであれば、寄付という形で応援いただけたら嬉しいです。マンスリーサポーターは常に募集しておりますし、法人寄付という形も大変助かります。またサンカクシャでは、チャリティランやお笑いライブ(サンカクシャには3名のお笑い芸人が所属!)、飲食店の営業など、誰でもカジュアルに参加できるイベントを開催しています。ぜひ、多くの方ができる形で「若者支援」に携わって欲しいと思っています。
メンバーの集合写真
特定非営利活動法人サンカクシャ
https://www.sankakusha.or.jp/