一般社団法人 WheeLog
一般社団法人 WheeLog は、障害者や高齢者など移動に困難を抱える方達のためにバリアフリー情報を発信しています。今回は、代表理事である織田さんにお話を伺いました。
何がきっかけで団体を始めようと思われたか教えてください。
22歳の頃に進行性の筋肉の難病「遠位型ミオパチー」と診断され、26歳の出産と同時に車いすを使い始めました。毎年夏になると、息子を海に連れて行きたいと思っていたのですが、車いすでビーチには行けないと思い込んであきらめていました。しかし、息子が3歳か4歳になる頃、ネットで調べたところ、バリアフリーのビーチがあることを知りました。実際に行ってみると車いすで楽しめ、その時、バリアフリー情報があれば車いすユーザーの世界が変わると実感しました。そこから個人でバリアフリー情報の発信を始めました。最初はYouTubeで「車椅子ウォーカー」という番組を作り、週1回動画を配信していましたが、一人の発信には限界があると感じ、さまざまな人がバリアフリー情報を共有できる「みんなでつくるバリアフリーマップ」の構想を思いつきました。その後、Google様から助成金を獲得し、今のウィーログの活動が始まりました。
団体を立ち上げて良かったと思ったこと、また一番困難と感じたことはどのようなことでしたか?
良かったことは、多くの方に支えていただけることです。元々、患者会団体で活動していたのですが、バリアフリーに特化した団体の必要性を感じ、団体を立ち上げました。最初は私と夫の2人で運営していましたが、途中で手が足りず倒れて入院したこともありました。それでも周りの方々がさまざまな形で手伝ってくれ、多くの力で活動が広がっていくことの素晴らしさに感動しました。今では、積極的に周りの人の力を借りて活動を進めています。また、「自分が投稿して誰かのためになるのが嬉しい」という利用者の言葉に心から感動しています。かつて外出に消極的だった方が、アプリを通じて人とつながり、積極的に社会に出る姿を見た時、実生活で車いす当事者が豊かに人生を送ることができる可能性を感じました。バリアフリー情報を集める活動が、行動変容を促す価値を提供できることは、何にも代えがたいものです。
一方、困難に感じたのは資金面です。一般社団法人を設立し、寄付に頼らずに自分の貯金でどれだけやりくりできるか挑戦しましたが、継続は厳しいものでした。そこでサポーター会員を募集し、支援してくださる方々のおかげで、何とか運営を続けることができました。メディアに掲載されることでアプリの知名度が上がる一方、システムに関わる費用も増加し、サポーターやスポンサー企業の拡充がますます重要となりました。
アプリの開発は多額の費用がかかり、また一度きりで終わるものではなく、継続的なアップデートが必要です。実現したい夢が増えるほど、開発費も増大します。だからこそ、車いすユーザーやその周りの方々が本当に必要としていることを見極め、より多くの人々の役に立つ仕組みを構築していきたいと考えています。
また、アプリが経済格差による情報格差を生むことを絶対にしたくないため、どんな車いすユーザーやその関係者でも、安心して無料で使い続けられる仕組みを守りたいと決意しています。当初、寄付のお願いに躊躇し、行動に移せない自分がいましたが、他の形で支援を申し出てくださる方々の存在に救われました。2025年にウィーログは「認定NPO法人」として東京都より認定されました。今後も継続的に企業や個人のスポンサー・サポーターを募集し、支援を募りたいと考えています。
ボランティアの皆さんと(前列中央が織田代表理事)
バリアフリーな場所が増えてきていると思いますが、一番感動したエリア、逆にもっと増やして欲しいという場所はありますか?
アメリカのロサンゼルスを訪れた際、感動したことがあります。新しい商業エリアには、段差がどこにもなかったのです。また、次回のロサンゼルスオリンピックの会場となるスタジアムも見学しましたが、そのバリアフリー対応は本当に素晴らしかったです。各階のさまざまな場所に車いす席があり、視界を遮らないアクリル板が設置され、介助者も共に楽しめるような柔軟な席配置がなされていました。さらに、呼吸器などの医療機器を必要とする方々のために、席には電源も用意されており、車いすユーザーのことがしっかりと考えられていると感じました。
一方で、もっとバリアフリーを増やして欲しいと感じるのは、小規模な飲食店です。入り口をスロープにする改修工事は費用面で大変だと思いますが、簡易スロープを使用するだけでも解決できます。「車いすを持ち上げればいい」と思う人もいるかもしれませんが、私の大型電動車いすは200kg近くあり、人力ではさすがに難しいのです。
FITからの寄付金はどのように使用されていますか?
FITからの寄付金は「アプリ改修費」に充てさせていただいております。アプリ開発から8年が経ち、WheeLog!アプリは年間1.5万人のユーザーに利用されるまでに成長しました。しかし現在、大規模な改修が必要となっております。そのため、いただいた寄付金に加え、助成金や補助金も活用しながら、要件定義を行い、アプリの全面的な改修を進めています。
また、日常的なアプリ運営にかかるサーバーなどの「システム利用料」や、車いすユーザーや支援者にアプリを知ってもらうための「広報活動」(チラシ作成やイベント活動など)にも寄付金を活用させていただいております。
WheeLog!アプリ
私たちからはどのような支援ができるでしょうか?
まず1つ目は「アプリの利用」です。ぜひアプリをダウンロードして中を覗いてみてください。そして、お出かけした時に、トイレの写真1枚でも良いので投稿してみてください。
2つ目は「イベントへの参加」です。車いすで街歩きする活動や、オンラインでの交流会など、さまざまな車いすユーザーや歩ける人たちと交流できる場があるので、ぜひ参加してみてください。
3つ目は「寄付」です。アプリは車いすユーザーの方にとって貴重な「情報インフラ」であり、無料で提供しています。寄付という形で活動を支えていただけると大変ありがたいです。
4つ目は「研修」です。車いす体験の研修を実施しており、実際にFIT様とのご縁でつながった企業様でも実施しました。障害や車いすユーザーへの理解を深めるプログラムとして好評をいただいており、ぜひ多くの企業で実施していただきたいです。
車いす体験研修の様子
今後はどのような活動の広がりを考えていますか?
重度の呼吸器を使用する障害児が、富士山の5合目まで行って、車いすの軌跡(走行ログ)をアプリに記録してくれたことがあります。初めは真っ白だった地図が、ユーザーの皆さんの気持ちとともにバリアフリー情報で埋め尽くされていく様子を見て、WheeLog!はまさに血の通った「世界で一番あたたかい地図」だなと自負しています。こうした情報をこれからもどんどん増やしていきたいです。
そのためには、私たちの活動に理解を示してくださる方々の支援が欠かせません。特に、日本の都市部ではWheeLog!への投稿が増えていますが、地方都市や海外、特にアジアやアフリカなどはまだまだこれからです。世界を見据え、本当にバリアフリー情報を必要としている方々に届けられるような活動をしていきたいです。
2025年7月、ニューヨークの国連本部で開かれたSDGsの国際会議に、日本代表として参加させていただきました。そこで「誰一人取り残さない」社会をめざす取り組みとして、ウィーログの活動をご紹介できたことは、とても光栄であり大きな励みになりました。
障害があっても、一人ひとりが社会の大切な担い手になれる。そんな未来を、これからもみんなと一緒に築いていきたいと思っています。
国連本部でスピーチする織田代表理事
最後にこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
今回のご支援を通じて、これまでつながりが薄かった方々との距離が近くなったように感じることが増えています。どのような形であれ、興味を持っていただけることは嬉しいことですし、ご支援いただけることは大変ありがたいです。私たちは「車いすでもあきらめない世界」を実現するために、この活動をさらに社会に広げていきたいと願っています。今後ともお力添えいただけますと幸いです。
一般社団法人 WheeLog
https://wheelog.com/hp/

